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4,000万円を50年で借りると、35年より毎月2.8万円安い。ただし10年後の残高は356万円多く残ります

「金利が上がる前に買った方がいい」「福岡の住宅価格も、待つほど高くなるかもしれない」。そんなニュースを見ると、家探しを急いだ方がよいように感じます。けれども、売却や将来の資産価値まで条件に加えると、家選びは際限なく難しくなります。まず大切にしたいのは、今の家族が無理なく、気持ちよく暮らせるかです。

先に結論を書きます。20代で買うこと自体が危ないのではありません。35年返済でも無理のない購入額を先に決めて、50年ローンは手元のお金を残すために使う。「50年なら借りられる金額」を、そのまま物件の予算にしない。ここだけです。

20代の持ち家率4割は、福岡の数字ではありません

福岡で35年と50年の住宅ローンを比較する図解
35年返済と50年返済は、毎月の負担と返済期間の両方を比べます(とまとリビング作成)

きっかけは、不動産価格と金利の上昇を背景に住宅購入を急ぐ若い世帯が増えている、というニュースでした。ここでは元記事の中身ではなく、そこで使われた数字を公表資料でたどり直します。

総務省の公式表では、2025年の二人以上世帯のうち、世帯主が29歳以下の持家率は40.3%です。同じ区分の集計世帯数は84世帯、平均年間収入は630万円、平均貯蓄現在高は428万円です。

出典:総務省統計局「家計調査年報(貯蓄・負債編)2025年・第8-5表」(2025年平均)

同じ表には、負債の数字も載っています。29歳以下の平均は1,467万円で、そのうち住宅・土地のための負債が1,391万円。貯蓄428万円に対して、負債が3倍以上あります。全世帯の平均(貯蓄2,059万円・負債675万円)とは逆の形です。
家を買った人が多く含まれる年代なので、当然といえば当然の数字です。ただ、「4割が持ち家」という数字だけを見るのと、その裏側の負債まで見るのとでは、受け取り方が変わると思います。

この40.3%は福岡県ではなく全国値です。一人暮らしを含む20代全体の数字でもありません。「周りも買っているから」と急ぐ根拠にはしないでください。

福岡県・福岡市は別の統計で見る

総務省「2023年住宅・土地統計調査」から、家計を主に支える人が30歳未満で、2人以上の主世帯を集計すると、持ち家の割合は全国18.8%、福岡県14.4%、福岡市10.7%です。

30歳未満・2人以上の主世帯に占める持ち家
地域 主世帯総数 持ち家世帯数 割合
全国 957,900世帯 179,800世帯 18.8%
福岡県 42,400世帯 6,100世帯 14.4%
福岡市 16,900世帯 1,800世帯 10.7%

出典:とまとリビング試算。総務省「令和5年住宅・土地統計調査・第51表」の公表世帯数から算出(2023年10月1日)。

ただし40.3%と10.7%は、直接は比べられません。家計調査は「世帯主」の年齢、住宅・土地統計調査は「家計を主に支える人」の年齢で分けていて、対象も集計方法も違います。福岡市が全国より29.6ポイント低い、という読み方はできません。

福岡で実際に住宅ローンを組んだ人の平均像

住宅金融支援機構のフラット35利用者調査では、2025年度に福岡県で利用した人の平均年齢は42.9歳、平均世帯年収は689.2万円、平均所要資金は4,153.3万円でした。予定月返済額は平均12.49万円、総返済負担率は平均23.5%です。

福岡県のフラット35利用者平均
利用件数 1,530件 平均年齢 42.9歳
平均世帯年収 689.2万円 平均所要資金 4,153.3万円
平均手持金 437.7万円 平均融資額 3,443.3万円
予定月返済額 12.49万円 総返済負担率 23.5%

出典:住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査・第1表」(2025年度、公表2026年7月24日)。フラット35利用者の平均で、福岡県の全購入者や20代だけの数字ではありません。

この平均から分かるのは「年収689万円なら4,153万円まで安心」ということではありません。実際の利用者も、手持金を平均437.7万円入れています。また総返済負担率は機構の定義で「全ての借入れ(機構が認めるものを除きます。)に関して、年収に占める年間合計返済額の割合」なので、車や教育のローンも入ります。いっぽう固定資産税、マンションの管理費・修繕積立金、車検、保育料などは住宅ローン返済額とは別です。

福岡で購入を急ぎたくなる背景

西日本レインズによると、2026年4〜6月期の福岡県の中古マンションは、平均成約価格が2,938万円、平均㎡単価が43.6万円でした。前年同期比は価格が11.9%上昇、㎡単価が11.8%上昇しています。中古戸建ては平均成約価格2,404万円で、前年同期比4.1%上昇でした。

出典:西日本不動産流通機構「季刊サマリーレポート 2026年4〜6月期・福岡県」(2026年4〜6月期)。福岡県全体の平均で、福岡市の駅近物件や20代購入者だけの数字ではありません。

2026年地価公示の住宅地では、前年からの上昇率が中央区大濠1丁目で13.7%、南区大楠3丁目で12.0%、西区姪の浜5丁目と早良区次郎丸4丁目でそれぞれ11.9%でした。

出典:福岡県「令和8年地価公示・上昇率順位表(住宅地)」(2026年1月1日)。地価公示は標準地の土地価格で、住宅の販売価格ではありません。

価格上昇は購入を急ぎたくなる材料です。ただし、地価が上がった地域の家を買えば必ず得をする、という意味ではありません。将来の値動きを予想して候補を増やすより、家族が払える総額と必要な暮らしを先に決める方が迷いを減らせます。

市外へ出れば安くなる、とは限りません

予算が足りないとき、まず思いつくのは「福岡市の外を見る」ことだと思います。ただ、駅に近い、広い、新築という条件をそろえると、近郊でも価格は上がります。

ひとつ前の節で見たとおり、福岡県でフラット35を使った人の平均所要資金は4,153.3万円でした。これは福岡市内も近郊も含めた平均です。市外に出たから自動的に3,000万円台になる、という話ではありません。

予算を下げるときに動かせるのは、場所だけではありません。駅距離、築年数、広さ、新築か中古か。このうちどれを調整するかを先に決めておくと、物件を見はじめてから迷いにくくなります。

逆に、どれも譲らないまま「安いところ」を探し続けると、通勤時間だけが延びていく、ということが起こります。

福岡でも50年ローンは利用できます

福岡銀行の住宅ローンは最長50年です。2026年9月のプレミアム住宅ローン特別金利は年1.125%〜ですが、借入時年齢が満18歳以上51歳未満で、税込年収700万円以上または合算年収900万円以上などの条件があります。

出典:福岡銀行「ふくぎんの住宅ローン」(2026年9月)。適用金利は審査や団信の内容などで変わります。

西日本シティ銀行も最長50年です。出産・育児時の元金返済据置を合計最長5年利用でき、当初の借入期間から最長55年まで延長できる制度があります。

出典:西日本シティ銀行「住宅ローン 建築名人」(2026年8月10日)。利用には同行所定の条件と審査があります。

全期間固定金利の【フラット50】も最長50年ですが、長期優良住宅など住宅側にも条件があります。借入額は100万円以上8,000万円以下で、建設費または購入価額の90%以内です。

出典:住宅金融支援機構「【フラット50】ご利用にあたっての注意事項」(2026年度確認)。変動金利の50年ローンと、全期間固定金利のフラット50は同じ商品ではありません。

4,000万円を35年と50年で借りるとどうなる?

50年ローンは、同じ荷物を長い階段で少しずつ運ぶようなものです。1回の負担は軽くなりますが、運び終えるまでが長くなります。大切なのは、軽くなった分をさらに高い家へ使うのか、暮らしの余白として残すのかです。

借入額4,000万円、元利均等返済、ボーナス返済なし、金利が全期間変わらない条件で試算しました。手数料、保証料、団信の上乗せ、繰上返済は含みません。

4,000万円の返済試算
返済条件 毎月返済額 総返済額 10年後残高
35年・年1.125% 約11.53万円 約4,840.9万円 約3,012.9万円
50年・年1.125% 約8.72万円 約5,231.7万円 約3,369.1万円
50年・年2.125% 約10.83万円 約6,497.6万円 約3,499.6万円

出典:とまとリビング返済試算。福岡銀行の2026年9月公表金利を基準に、借入額4,000万円・金利一定の仮定で元利均等返済式により算出。

年1.125%の場合、50年返済は35年返済より毎月約2.81万円軽くなります。一方、総返済額は約390.8万円増え、10年後の残高も約356.3万円多く残ります。

50年ローンが「高い家を安く見せる」仕組み

年1.125%・50年で4,000万円を借りた月額は約8.72万円です。同じ金利と月額で35年返済にすると、借りられる元金は約3,026.1万円です。

つまり、50年へ延ばすと、4,000万円の借入れが35年返済の約3,026万円と同じ月額に見えます。差は約973.9万円です。

出典:とまとリビング返済試算(2026年9月)。年1.125%、元利均等、月額87,196円、金利一定、諸費用なしの仮定。

月額が払えることと、総額が無理なく払えることは別です

50年ローンの月額だけを見て物件価格を約974万円引き上げると、育休、教育費、車の買い替えなどに使える余白が減ります。50年の利点は「約974万円高い家を買えること」ではなく、同じ4,000万円を借りたときに毎月約2.81万円を手元へ残せることです。

月2.81万円を残せるかが分かれ目

35年と50年の月額差、約2万8,063円を10年間そのまま預金したと仮定すると、合計は約336.8万円です。利息や運用益は含めていません。

同じ10年後、50年返済と35年返済の残高差は約356.3万円です。月額差を使わずに残せれば、この残高差の大部分に相当するお金を手元に持てます。

出典:とまとリビング試算(2026年9月)。月額差28,063円×120か月、金利一定の仮定。預金金利、税、各種手数料は含まない。

反対に、月額が下がった分を物件価格の引上げや日常支出で使い切れば、返済期間だけが長くなります。50年ローンを安全側に使えるかは、借りた後に毎月の差額を残せる家計かどうかで変わります。

売ることは考えすぎず、残債は一度だけ確認する

10年後の残高を載せるのは、売却を前提に家を選ぶためではありません。転勤など予想外の事情が起きた時に、選択肢が極端に狭くならない購入額かを一度確認するためです。

駅距離、築年数、将来の売却価格まで内見のたびに考え始めると、家族に必要な暮らしが後回しになります。将来価格は断定できません。残債は安全確認にとどめ、家選びの中心には置かなくて大丈夫です。

家選びは5つの順番で考える

  1. 今の家族に必要な暮らしを決める通勤、保育、学校、買い物、広さのうち、譲れないものを3つまでに絞ります。
  2. 毎月ではなく総額の上限を決める固定資産税、管理費・修繕積立金、車、教育費も含めて考えます。
  3. 福岡の生活圏を2〜3か所に絞る福岡市内駅近、春日・大野城、糟屋郡など、通勤と車の持ち方で比べます。
  4. 35年と50年を同じ借入額で比べる50年にしたから物件価格を上げるのではなく、月額差を残せるかを見ます。
  5. 最後に一度だけ残債を確認する売却前提にはせず、万一の事情でも身動きが取れなくならないかを見る安全確認です。

福岡では住宅費と車を一緒に考える

住む場所で変わる、住宅費以外の確認項目
暮らし方 候補の例 確認したい費用
鉄道中心 福岡市内の地下鉄・西鉄・JR駅徒歩圏 管理費、修繕積立金、駐車場
鉄道+車1台 春日、大野城、粕屋、新宮などの駅周辺 駅距離、送迎動線、駐車場1台分
車中心 駅から離れた郊外・バス便 車2台の購入、保険、車検、燃料

郊外へ移って住宅価格が下がっても、車が1台増えれば固定費は上がります。反対に、駅近マンションは購入価格が高くても車を手放せる家庭があります。「将来どこが高く売れるか」より、住んでいる間の住宅費と交通費を合わせた家計で比べる方が、今の家族に合う答えを出しやすくなります。

物件を見る前の小さな一歩

家族の譲れない条件を3つだけ書き、同じ借入額について35年、50年、金利が1ポイント高い場合を比べます。50年にした場合は、35年との差額を毎月いくら残すかも決めてください。売却の検討は、予想外の事情に備える最後の安全確認だけで十分です。

まとめ

福岡でも住宅価格と地価が上がり、地元銀行で50年ローンを選べるようになっています。若いうちに家を買いたいと感じる理由はあります。

ただし、全国の持家率40.3%は福岡の20代の数字ではなく、周囲が皆買っている証拠でもありません。将来の売却価格を予想し続けても、家選びの正解は決まりません。

まずは今の家族が暮らしやすいこと、収入が一時的に減っても返せること、50年にしても物件予算を上げすぎないこと。この3つを優先してください。50年ローンで生まれた月額差を家計の余白として残せるなら、若いうちに長く借りられることを前向きに使えます。

住宅ローンや購入時期は、家族構成、収入、保有資産、希望する暮らしによって判断が変わります。金利や商品条件は変更されるため、申込前に金融機関の最新情報を確認してください。

ここまで数字を並べましたが、いくらまでなら無理がないかは、家族の人数、車の持ち方、共働きを続けるかどうかで変わります。
気になったら、私たちに聞いてください。

出典