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福岡市は9月4日から減圧給水を強化。水道水の約3分の1は筑後川から来ています

福岡市は2026年9月4日から、水道の圧力を調整する「減圧給水」を強化しました。
市内で使う水道水の約3分の1を支える筑後川で、水が少なくなっているためです。
市は、家庭への給水に大きな影響が出ない範囲で行うと説明しています。
春日・那珂川でも節水の呼びかけが強まっています。
筑後川の水不足が、住んでいる町の水道にどうつながるのかを見てみます。

福岡市の水道は、筑後川の水にも支えられています

筑後川の渇水と聞いても、福岡市や春日市で暮らしていると、少し遠い場所の話に感じるかもしれません。
けれど、福岡市が使う水道水の約3分の1は筑後川から来ています。
春日市の案内でも、春日市を含む福岡都市圏の水道水の約3分の1を筑後川に頼っていると説明されています。

この「約3分の1」は、どの市でも同じという意味ではありません。
福岡市の割合と、福岡都市圏全体の割合は、それぞれの資料で示されたものです。
春日市の各家庭で使う水も必ず3分の1が筑後川、と置き換えることはできません。

自分の町の天気だけでは、水源の状況は分からないのですね。
水道を支えている川やダムがどこにあるかで、気にかけたい雨の降る場所も変わります。

筑後川を横断する筑後大堰
筑後川の筑後大堰(2010年5月10日撮影/河川一等兵CC BY-SA 3.0

9月4日から、川から取る水を30%減らす調整に

9月3日の筑後川水系の渇水調整では、翌4日から福岡地区水道企業団が30%の取水制限を行うことになりました。
この企業団は、福岡都市圏の市や水道事業者へ水を供給する組織です。

取水とは、川などから水を取り入れること。
今回の30%は、同じ時期の実績取水量と比べて、川から取る水を減らす割合です。
家庭の蛇口から出る水の量や、水圧を一律30%下げるという数字ではありません。

同じ9月4日から、山口調整池にためている水を使い、筑後川から取る水を少なくする対応も始めることになりました。
川からの取水を減らす際には、こうした貯留水も使って調整します。

「取水制限」「減圧給水」「断水」は、指していることが違います

  • 取水制限:川などから取り入れる水を減らすこと。
  • 減圧給水:水を送りながら、配水管の水圧を低く調整すること。
  • 断水:家庭などへの水の供給が止まること。

筑後川の取水制限率だけで、自宅の水がいつ、どれだけ出にくくなるかは決まりません。
家庭への対応は、自分の町や水道事業者の案内を見てください。

福岡市は、水を送りながら圧力をさらに細かく調整します

福岡市は、平常時から水道管の圧力を調整しています。
9月4日からは、その減圧給水を強化し、市内で使う水の量を抑えて、筑後川水系のダムにためた水を長く使えるようにする方針です。

市の説明は、家庭などへの給水に大きな影響が生じない範囲で実施する、というものです。
水を止める案内とは内容が違います。

仕組みを少し見ると、市内の水道管にある水圧計や流量計の数値を、水道局が24時間見ています。
使われる水の量に合わせて弁を遠隔操作し、水圧を調整します。
水源の状況に応じて、浄水場から送り出す量や、水道管の中を流れる水の向きも変え、浄水場の間で水を融通しています。

蛇口の手前では、こうした調整が行われているのですね。
水が使えている間も、家庭で流しっぱなしにする時間を減らすことには意味があります。

8月の雨は平年の約16%。貯水率も前年同日より下がっています

筑後川の瀬ノ下上流域では、2026年8月の平均雨量は37.5ミリでした。
同じ地域の8月の平年値は232.6ミリ。
今年は、その約16%です。
平年値は1991〜2020年の30年間の平均で、福岡市内の雨量を比べた数字ではありません。

ダムなどにたまっている水も、同じ日付で前年と比べると違いがはっきりします。

筑後川水系6施設の貯水状況。両年とも9月2日、渇水対策容量を除く。国の速報資料による
たまっている水の量 貯水率
2025年9月2日 約4,893万立方メートル 72.9%
2026年9月2日 約2,431万立方メートル 36.2%

対象は、江川・寺内・小石原川・合所・大山の各ダムと、筑後大堰の6施設です。
どちらの年も、同じ施設と同じ容量の範囲で比べています。

貯水率は、利用のために確保された容量に対して、どれだけ水がたまっているかを示します。
この比較には、渇水時に使う別枠の「渇水対策容量」は含めていません。
6施設の貯水率を、福岡都市圏で使える水すべての残り割合として読むことはできません。

さらに9月8日時点では、同じ6施設の貯水率は33.9%です。こちらは最新の水源情報で、表の前年同日比較とは日付が違います。
雨の少なさと水源の残量が、今回の取水制限や節水要請につながっています。

春日那珂川水道企業団も、9月3日に渇水対策本部を設置

春日那珂川水道企業団は、9月3日に渇水対策本部を設置しました。
川からの取水制限に伴い、福岡地区水道企業団から受ける水にも制限がかかることを説明しています。

一方で、企業団と那珂川市は、自己水源などがあるため、送水制限が始まっても直ちに断水するわけではないと案内しています。
市の外から受け取る水の量と、家庭へ送る水の状況には、こうした水源の違いも関わります。

今回の渇水に関する家庭向けの案内。福岡市・那珂川市は9月3日、春日市は9月4日の発表
家庭に関わる案内
福岡市 9月4日から減圧給水を強化。
家庭への給水に大きな影響が生じない範囲で実施し、さらに節水を要請
春日市 企業団の渇水対策本部設置を案内し、より一層の節水を要請。
少雨が続く場合の給水制限・断水のおそれを説明
那珂川市 自己水源などがあるため直ちに断水するわけではないと説明し、節水を要請

「直ちに断水するわけではない」は、今後も断水しないという約束ではありません。
春日市などは、少雨が続けば給水制限や断水のおそれがあるとしています。
雨や貯水量によって対応は変わるため、お住まいの市や水道事業者の新しい案内を確認してください。

まずは、流しっぱなしの時間を少し減らすところから

春日那珂川水道企業団の節水案内には、毎日の暮らしで取り組める方法が並んでいます。

今日の入浴や食器洗いでできること

  • 体や髪を洗っている間は、シャワーをこまめに止める。
  • 食器の油汚れは、洗う前に紙や布で拭き取る。
  • 歯磨きの口すすぎには、コップを使う。

福岡市の減圧給水も、春日・那珂川での節水要請も、暮らしに使う水を保つための対応です。
筑後川の水源情報と、自分の町の給水案内を組み合わせると、遠くの川のニュースが、毎日使う水道の話につながります。

気になったら、私たちに聞いてください。

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出典

土砂災害の区域は、これから増えます。福岡県が調べている候補は13,662か所

重要事項説明で「土砂災害警戒区域には入っていません」と言われても、それはいまの話です。

福岡県は高精度の地形図を使って、区域になりうる場所を新たに13,662か所見つけました。
2024年度から現地を回っていて、指定は順番に進みます。

それと、区域に入っていなくても建築の制限がかかる決まりが別にあります。
がけの高さの2倍です。

水害(こちらの記事)とは、ずいぶん事情が違います。

いま、福岡市に1,774か所あります

野芥駅付近から見た油山
野芥駅のあたりから見た油山。早良区・城南区・南区の南側は、こうして山につながっています(2015年6月撮影/そらみみ (Soramimi)CC BY-SA 4.0

福岡県が指定している土砂災害警戒区域は18,496か所
そのうち特別警戒区域(レッドゾーン)が16,738か所です(2026年8月18日現在)。

福岡市だけで1,774か所あります。
区ごとに見ると、こうなります。

福岡市の土砂災害警戒区域(福岡県砂防課・2026年8月18日現在)
警戒区域 うち特別警戒区域
西区 580 515
早良区 449 431
東区 361 278
南区 132 99
中央区 95 78
博多区 84 75
城南区 73 51
福岡市計 1,774 1,527

周辺の市や町も出しておきます。

糟屋郡・筑紫地区の土砂災害警戒区域(同上)
市町 警戒区域 市町 警戒区域
筑紫野市 356 宇美町 159
那珂川市 256 須恵町 120
篠栗町 248 久山町 87
太宰府市 195 新宮町 72
大野城市 55 志免町 54
春日市 16 粕屋町 28

春日市の16か所と粕屋町の28か所が少なく、筑紫野市・那珂川市・篠栗町が多い。
平らな町と、山にくっついている町の差がそのまま出ています。

中央区にも95か所あります

桜坂駅付近の桜坂山の手通り
桜坂駅のあたり(中央区)。名前のとおり坂です。中央区にも土砂災害警戒区域は95か所あります(2015年6月撮影/そらみみCC BY-SA 4.0

意外なのは中央区です。
都心ですが、95か所すべてが急傾斜地の崩壊で、うち78か所がレッドゾーンです。

福岡市が公表している町丁名には、桜坂、浄水通、平尾、小笹、赤坂、六本松、警固、笹丘、輝国といったところが並びます。

坂の名前がついた町が多いことに気づきます。

南区も柏原・桧原・長丘・高宮・寺塚・大池、城南区も片江・南片江・東油山・七隈・樋井川、早良区も高取・西新5丁目・昭代。
山の裾に広がった住宅地は、たいてい入っています。

ただし町丁名に載っている=その町全部が区域、ではありません。
区域は斜面ごとに線が引かれているので、同じ丁目の中でも入る土地と入らない土地があります。
福岡市は校区ごとに地図を出しているので、必ず地図で確かめてください。

これから増えます。13,662か所を調べています

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

福岡県の発表(2025年6月27日)より

全国的に、土砂災害警戒区域に指定されていない箇所においても土砂災害が発生している状況を踏まえ、福岡県では高精度地形図を用いて、令和3年度から5年度にかけ、新たに区域指定を行うための調査箇所として13,662箇所を抽出し、令和6年度に現地調査に着手しました。

国が2020年度に方針を変えて、高精度の地形図で拾い直すことになりました。
それまでの地形図では見つけにくかった場所が出てきた、ということです。

県はこれを2023年度までに13,662か所として抽出し、2024年度から現地を回っています。

最初の指定は太宰府市の15か所で、2025年6月27日でした。
土石流が4か所(うちレッド1)、急傾斜地の崩壊が11か所(うちレッド7)です。

これから、順番に増えていきます。

福岡市は、調査中の場所も避難情報の対象にしています

福岡市はこう書いています。
「基礎調査箇所は、土砂災害の危険性がある区域であるため、福岡市では土砂災害警戒区域に準じ、避難情報の発令対象とします」。

まだ指定されていなくても、避難の呼びかけは同じ扱いということです。

福岡市は校区ごとに「基礎調査箇所のある町丁名」も公表しています。
いま区域外でも、この一覧に載っていれば話は別です

もうひとつ、福岡市が正直に書いていることがあります。

「今年度、区域が変更されたものは、土砂災害ハザードマップへの反映ができていません」。
地図と実際の指定にはズレがあります。
ハザードマップだけでなく、県の「土砂災害警戒区域等マップ」も見てください。

区域の外でも、がけの近くには建てられません

ここは見落とされがちなところです。

土砂災害警戒区域とはまったく別に、建築基準法の条例(通称「がけ条例」)があります。
福岡県の条例では、こう決まっています。

がけ条例(福岡県建築基準法施行条例第5条)
内容
「がけ」とは 地表面が水平面に対し30度を超える傾斜度をなす土地
対象になる高さ がけの上端と下端の垂直距離が3mを超えるもの
建てられない範囲 がけの上端から、また下端から、がけの高さの2倍に相当する距離以内
例外 擁壁を設ける、地盤が強固、建築物の構造で安全を確保する、土留施設や開口部のない壁を設けるなど

高さ5mのがけなら、上も下も10m以内には居室のある建物を原則建てられません。

これは土砂災害警戒区域に入っているかどうかとは関係なく効きます
区域外でも、条件を満たすがけがあればかかります。

福岡市の説明はもう少し実務的です。
「敷地の高低差が3メートルを超える場合は、福岡市建築基準法施行条例第5条(いわゆる『がけ条例』)の規定により、擁壁から決められた距離をあけて建物を建築するか、『がけ地』に対する安全性を確認する必要があります」。

あわせて、建築基準法第19条で既存の擁壁の構造的な安全性も確認することになっています。

古い擁壁がある土地は、そこを必ず見てください

擁壁が古い、図面がない、検査済証がない。
この土地に建て替えようとすると、擁壁を作り直すか、建物の位置を下げるかになります。

どちらも数百万円単位の話になりえます。
土地の値段だけを見て決めないでください。

擁壁の確認済証・検査済証・築造図が残っているか、水抜き穴があるか、隣地との境界はどうなっているか。
ここは購入前に確認できます。

レッドゾーンだと、何が変わるか

特別警戒区域(レッドゾーン)に入ると、規制の中身が変わります。
福岡県砂防課の説明から引きます。

特別警戒区域での規制(福岡県砂防課)
内容
売買 特定の開発行為は、知事の許可を受けた後でなければ宅地の広告も売買契約の締結もできない
開発 住宅宅地分譲や、社会福祉施設・学校・医療施設の建築のための開発行為は、対策工事の計画が技術的基準に従っていると知事が判断した場合に限って許可される
建築 居室を有する建築物は、作用すると想定される衝撃等に対して構造が安全かどうか建築確認がされる
移転 著しい危害のおそれがある建築物の所有者等に、知事が移転を勧告できる。
移転する人には住宅金融支援機構の融資やがけ地近接等危険住宅移転事業の補助がある

売る側から見ると、許可が下りるまで広告も契約もできないのがいちばん重い規制です。

買う側から見ると、建てるときに普通より頑丈な構造が要る、ということです。

買う前に、自分で確かめる手順

水害の記事と同じで、契約の場で初めて聞くのでは遅すぎます。

  • 県の「土砂災害警戒区域等マップ」で住所を見る:イエロー・レッド・基礎調査箇所を、それぞれ別に確認する
  • 福岡市の校区別ハザードマップも見る:ただし今年度の変更が反映されていない場合があるので、県のマップと両方
  • 敷地の高低差を測る:3mを超えるなら、がけ条例がかかる可能性があります
  • 擁壁の書類を見る:確認済証、検査済証、築造図。
    無い場合は建て替えの費用が変わります
  • 避難場所:土砂災害のときの避難場所は、水害のときと違うことがあります

区域に入っていたら、その物件はやめたほうがいいのか。

そうとは限りません。
福岡市だけで1,774か所あり、そこにも多くの人が住んでいます。

大事なのは、建物と擁壁がどうなっているかを見て、そのうえで決めることです。
区域の色だけでは決まりません。

気になったら、私たちに聞いてください。

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出典

西新も大橋も香椎も。福岡市が浸水対策をしてきた地区の名前は、全部公表されています

福岡市は、過去に浸水した地区の名前を公表しています。

先に対策を終えた55地区と、いま進めている33地区。
西新も百道も大橋も井尻も香椎も、その中にあります。

驚かせたいのではありません。
名前が出ている=市がもう手を入れた場所だからです。
この記事で地名を全部並べます。

それともうひとつ。
水害だけは、家を買うときに必ず説明される決まりになっています。
2020年8月からです。

水害は、買うときに必ず説明されます

警固断層の記事で、断層のことは聞かないと出てこない、と書きました。

水害は違います。
説明しなければならない決まりがあります。

2020年7月17日に国土交通省が発表し、同年8月28日から施行されました。
宅地建物取引業法の施行規則が変わり、重要事項説明の項目にこれが加わっています。

重要事項説明に加わった項目(国土交通省)

水防法(昭和24年法律193号)の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地

対象は洪水・雨水出水(内水)・高潮の3つ。

市町村が配っている印刷物か、ホームページに載っているものを印刷したもので、入手できる最新のものを使うことになっています。
避難所の位置も示すことが望ましいとされています。

国はあわせて、こうも書いています。
浸水想定区域に入っていないことをもって、浸水しないと誤解させないようにと。

色がついていない場所が安全、という意味ではありません。

「洪水」と「内水」は、別のものです

緑橋から見た御笠川の上流側(博多区)
緑橋から見た御笠川(博多区堅粕・博多駅前)。1999年と2003年に、この川があふれて博多駅の周りが浸かりました(2023年9月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

ハザードマップは3種類あります。
名前が似ていて混ざりやすいので、市の説明をそのまま引きます。

福岡市 道路下水道局の説明

内水氾濫/下水道の雨水排水能力を上回る降雨量による浸水、あるいは河川水位の上昇により下水道から河川へ放流できず浸水
洪水/河川水位が上昇し、河川の破堤や溢水により浸水

大事なのは内水のほうです。

川があふれるのではなく、降った雨を下水道がさばききれずにあふれる。
だから川から離れていても起きます。

「近くに川がないから大丈夫」という考え方が、いちばん危ないところです。

もうひとつ、高潮があります。
台風や低気圧で海面が持ち上がるもので、こちらは沿岸部の話です。
福岡市の高潮ハザードマップは、県が2018年3月に公表した想定にもとづいています。

市全域の「雨の地図」は、今年3月にできたばかりです

内水のハザードマップは、福岡市ではずっと一部の地区しかありませんでした。

そろったのは、つい最近です。

博多駅周辺が2021年6月1日、天神周辺が2024年5月27日、そして下水道区域の全域が2026年3月25日です。

2021年の水防法の改正で、下水道の区域ぜんぶについて内水の浸水想定区域を指定する制度ができました。
それを受けて、福岡市が今年の3月に公表したものです。

つまり今から家を買う方は、川から離れた場所でも内水の話を説明されることになります。

去年までに買った方は、その地区の地図がまだ無かったかもしれません。
気になる方は、いまの地図で見直しておいてください。

下水道は1時間59.1mm、地図は153mmで描かれています

内水ハザードマップの色は、どれくらいの雨を想定して塗られているのか。

市はこう書いています。

福岡市の説明

想定最大規模の降雨(1時間当たり153ミリメートル)により、下水道などの排水能力を超える雨水が発生した場合の浸水の範囲と深さ

1000年に1度の規模にあたる雨です。

色は2つだけで、水色が浸水深0.5m未満、橙色が0.5m以上。
橙色は0.5m以上をまとめて塗っているので、そこが50cmなのか2mなのかは、この地図では分かりません。

いっぽう、福岡市の下水道が目標にしている水準は、こうなっています。

福岡市の雨水整備の水準(福岡市「雨水整備Doプラン2026」)
いつ・どこ 1時間あたり
2000年度より前 52.2mm
いまの目標(市全体) 59.1mm(10年に1度の規模)
博多駅周辺・天神周辺 79.5mm(1999年に実際に降った雨)

59.1mmで作っているところに、153mmで地図を描いている

だから色がついている場所は広く出ます。
色がついている=すぐ危ない、ではありません。

逆に言えば、59.1mmを超える雨が降れば、地図の色が薄いところでも水は出ます。

地図は「この雨ならここまで」という一つの目安であって、線引きではないということです。

浸水した地区の名前は、全部公表されています

御笠川の激甚災害対策特別緊急事業の完成記念碑
博多駅前1丁目に立つ、御笠川の激甚災害対策特別緊急事業の完成記念碑(2023年9月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

ここからは想定ではなく実績の話です。

福岡市は1999年6月29日の豪雨で大きな被害が出たあと、浸水した地区を洗い出して名前を挙げ、順番に対策してきました。
いまは2期目です。

福岡市の浸水対策(福岡市「令和8年度 道路下水道局 議案参考資料」)
1期目(雨水整備Doプラン) 2期目(雨水整備Doプラン2026)
地区 55地区 33地区
選び方 1991年度以降に複数回浸水し、1999年6月29日の豪雨でおよそ10戸以上が浸水した地区 1989〜2018年度に、1回の雨で5棟以上が浸水した地区
期間 2000〜2018年度(完了ずみ) 2019〜2026年度
事業費 約1,256億円 約137億円

ここが大事なところです。
1期目の55地区は、2018年度に対策が終わっています。

2期目の33地区も、2024年度末までに17地区が完了、2025年度に6地区、今年度(2026年度)に残り10地区が終わる予定です。
市の資料では、今年度末に33地区すべて完了となっています。

まず、1期目の55地区です。
ご自身が探している町の名前があるか、見てみてください。

1期目・重点55地区(2018年度に対策完了)
地区名
東区 13 西戸崎、和白丘、高美台、香椎、水谷・松崎・若宮、名島、多々良、土井、多の津、原田、筥松、馬出(1)、馬出(2)
博多区 11 千代、吉塚・堅粕、竹下、那珂(1)、那珂(2)、諸岡、半道橋、東那珂、浦田、板付、南八幡
南区 11 塩原、大橋、五十川、井尻(1)、井尻(2)、日佐・警弥郷、若久、中尾、寺塚、長住、太平寺
早良区 8 城西、西新、百道、昭代、室見、原、干隈、野芥
西区 5 姪の浜、小戸、上山門、生の松原、周船寺
城南区 4 鳥飼、別府、田島、七隈
中央区 3 春吉、平尾、小笹

西新、百道、大橋、井尻、長住、香椎、名島、竹下、板付。
よく名前を聞く町ばかりです。

選び方を、もう一度見てください。
1期目は「概ね10戸以上が浸水した地区」、2期目は「1回の雨で5棟以上が浸水した地区」です。

家がたくさん建っている場所ほど、この条件に当てはまります
名前が出ていることを、そのまま「危ない土地」と読まないでください。

次に、いま進めている33地区です。

ここからは、想定ではなく実際に起きたことです。

福岡市は「雨水整備Doプラン2026」で、1989年度から2018年度までに浸水被害が出た242地区を洗い出しました。
そのうち1回の雨で5棟以上が浸水した地区を選び、33地区を重点地区としています。

2期目・重点33地区(福岡市/◎=完了、○=2025年度完了見込み、△=2026年度完了予定)
地区名
博多区 12 ◎東月隈、◎井相田、◎千代、◎中洲、○東比恵、○上呉服町、△金隈、△西月隈、△吉塚、△堅粕、△上川端町、△下川端町
南区 7 ◎横手、◎三宅、◎市崎、◎花畑、○老司、○柳河内、△大楠
東区 5 ◎唐原、○松島、○原田(2)、△松田、△原田(1)
西区 4 ◎姪浜、◎小戸、◎福重、◎田尻
早良区 3 ◎干隈、◎賀茂、△田村
中央区 1 ◎港
城南区 1 ◎友丘

博多区が12でいちばん多い結果でした。
博多区は御笠川と那珂川にはさまれ、低いところが多い区です。

西区の4地区はすでに全部終わっていて、博多区は今年度に6地区がまとまって終わる予定になっています。

なお1期目と2期目で、千代・吉塚・堅粕・原田・干隈・姪浜のように同じ地名が出てきます。
地区の区切り方が違うためで、二重に数えているわけではありません。

それと、この88の地区名がすべてではありません。
市が洗い出した対象は242地区あり、重点に選ばれなかった209地区にも浸水した実績があります。
そちらは「できるところからできるだけ」の対策とされています。

博多駅は、2回浸かっています

なぜ博多駅の周りだけ整備水準が高いのか。
実際に2回やられているからです。

博多駅周辺の水害(国土交通省 九州地方整備局)
何が起きたか
1999年6月29日 1時間77mmの豪雨で御笠川が氾濫。
博多駅周辺で1mほど浸水。
道路・JR・地下鉄の一部が運休。
地下に取り残された方が1人亡くなりました
2003年7月19日 福岡市内の1時間の最大は20mm。
しかし御笠川の上流の太宰府市で104mm降り、連続の雨量は300mmを超えた。
御笠川の下流と山王放水路があふれ、博多駅の東側が再び浸水

2003年のほうを、よく見てください

福岡市内では1時間20mmしか降っていません。
傘をさせば歩ける雨です。

それでも太宰府市で104mm降ったために、博多駅の東側が浸かりました。

自分の家の上で降っていなくても、浸水します。
上流に何が降っているかで決まります。

川沿いを見るときは、その川の上流がどこかも見てください。

市はこのあと、2004年に「雨水整備レインボープラン博多」を立てました。
「大雨が降った後でも被害が無く、晴れ晴れとした気持ちで虹を眺めることができるように」という願いから付けた名前だそうです。
主要な施設は2012年5月に完成しています。

博多駅周辺では、大雨のときに水位を知らせる下水道として「比恵1号幹線」が指定されました。
これは全国で最初の指定です。
天神周辺では「天神幹線」が指定されています。

浸水は、火災保険の値段にも出ています

2024年から、火災保険の水災の料率が地域ごとに分かれました。

損害保険料率算出機構が「水災等地」という区分を作っていて、リスクがいちばん低い1等地から、いちばん高い5等地まで5段階あります。

同機構は「5等地の水災保険料は、1等地に比べて、約1.5倍となります」と書いています。

市区町村ごとに決まっていて、誰でも調べられます。
当社で福岡都市圏の19市町村を1つずつ引いたのが、次の表です。

水災等地(損害保険料率算出機構・2023年6月21日届出/2026年9月に当社が検索)
等地 市区町村
1等地
(いちばん低い)
春日市、須惠町、宇美町、篠栗町
2等地 福岡市東区・南区・城南区・早良区、大野城市、太宰府市、筑紫野市、那珂川市、粕屋町、志免町、久山町
3等地 福岡市博多区・中央区・西区、新宮町

この19市町村に、4等地と5等地はありません
いちばん高いところで3等地です。

春日市篠栗町が1等地、新宮町が博多区・中央区と同じ3等地、というあたりは意外かもしれません。

ハザードマップとは、別のものさしです

同機構はこう書いています。
「外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害等の水災リスクも含めて評価しているため、洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません」

土砂災害も入っているので、川から遠い山手でも等地が上がることがあります。

また「各保険会社の取り扱いは異なる場合がございますので、火災保険をご契約する際は各保険会社へご確認ください」とも書かれています。
実際の保険料は、保険会社と契約の中身で変わります。

買う前に、自分で確かめる手順

説明義務があるとはいえ、契約の場で初めて見るのでは遅すぎます。

内見の前に、自分で見ておいてください。

  • 洪水・内水・高潮の3つ:福岡市総合ハザードマップ(webmap.city.fukuoka.lg.jp/bousai/)で住所を入れる
  • 実際に浸水した地区か:この記事の2つの表で町名を探す
  • 避難場所:同じハザードマップに載っています。
    歩いて何分かも見ておく
  • 物件そのもの:道路より低くないか、駐車場が半地下でないか、エレベーターや電気設備が1階にないか

それと、重要事項説明のときに3種類とも見せてもらってください

洪水だけ見て内水を見ていない、ということが起こりえます。
今年3月にできたばかりの地図なので、なおさらです。

買ったあとにできることもあります。

福岡市には雨水流出抑制施設の助成があり、雨水タンクは購入代金の半分(100〜500リットル未満で上限15,000円、500リットル以上で上限30,000円)、浸透ますは既存の建物で1基20,000円・1敷地10万円まで補助が出ます。
申請は毎年4月1日から12月15日まで、1家屋につき1回です。

自分の家の雨を減らすことは、まわりの浸水を減らすことでもあります。

ハザードマップに色がついていたら、その物件はやめたほうがいいのか。

そうとは限りません。
153mmという雨での想定ですし、同じ区域でも土地の高さや建物の造りで違います。
知ったうえで選ぶのと、知らずに買うのは別です。

気になったら、私たちに聞いてください。

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耐震等級を取っていない家は、地震に弱いのか。熊本で数えられた1,955棟の答え

この7月末、熊本で震度7の地震がありました。

それから、耐震についてのご質問がとても増えています。

いちばん多いのが「この家、耐震等級は取っていますか」で、答えが「取っていません」だと、そこで不安になってしまう。

でも、等級を取っていないことと、地震に弱いことは同じではありません

実は新築の3戸に2戸は、いまも等級を取っていません

そして、等級を取っていない家がどれくらい地震に耐えたかは、10年前の熊本で実際に数えられています。

その数字と、2025年に変わった建築基準法の話をします。

まず、耐震等級とは何か

福岡市西区の千代今宿通り沿いの街並み
西区・生の松原の千代今宿通り。この通り沿いに建つ家も、建った年で守られ方が変わります(2022年11月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

耐震等級は、建築基準法とは別の「住宅性能表示制度」という仕組みの中の、ひとつの表示項目です。

正式には「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」といって、地震に対する倒壊のしにくさを3段階で表します。

耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の定義
等級 具体的な性能
等級3 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力の1.5倍の力に対して、建物が倒壊、崩壊等しない程度
等級2 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力の1.25倍の力に対して、建物が倒壊、崩壊等しない程度
等級1 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力に対して、建物が倒壊、崩壊等しない程度
=建築基準法がすべての建物に求めている最低基準

ここがいちばん大事なところです。

等級1は「建築基準法と同じ」

つまり等級というのは、ゼロから始まる点数ではなく、建築基準法を1として、その何倍かを表すものさしです。

等級を取っていない家は「0」ではなく、法を守って建てられている限り、等級1にあたる強さで設計されています。

そして、等級を取ること自体が任意です。

国土交通省の発表では、2024年度(令和6年度)に設計住宅性能評価書が交付されたのは279,010戸。

同じ年の新設住宅着工は816,018戸なので、交付割合は34.2%でした。

9年連続で増えていて過去最高の数字ですが、裏を返せば、いまも3分の2は取っていません。

取っていないほうが、まだ多数派なのです。

では、等級を取っていない家はどれくらい耐えたのか

2016年の熊本地震で被害を受けた益城町中心部
2016年の熊本地震のあとの益城町中心部。この一帯が、以下で使う1,955棟の調査範囲です(2016年5月撮影/hyolee2CC BY-SA 3.0

2016年の熊本地震のあと、日本建築学会が益城町の中心部で悉皆調査をしました。

悉皆調査とは、範囲を決めて、その中の建物を1棟も飛ばさず全部数えるやり方です。

木造1,955棟を含む2,340棟が対象になり、国の委員会がその結果を報告書にまとめています。

木造1,955棟を、建てられた時期で3つに分けた結果がこれです。

益城町中心部の木造建築物の被害状況(日本建築学会の悉皆調査・国土交通省の委員会報告書より)
建てられた時期 棟数 無被害 軽微〜中破 大破 倒壊・崩壊
〜1981年5月 759棟 39棟(5.1%) 373棟(49.1%) 133棟(17.5%) 214棟(28.2%)
1981年6月〜2000年5月 877棟 179棟(20.4%) 537棟(61.2%) 85棟(9.7%) 76棟(8.7%)
2000年6月〜 319棟 196棟(61.4%) 104棟(32.6%) 12棟(3.8%) 7棟(2.2%)

倒壊・崩壊した割合が、28.2% → 8.7% → 2.2%

無被害だった割合が、5.1% → 20.4% → 61.4%。

震度7が2回きた場所で、この差です。

そして、ここからが本題です。

同じ調査から、2000年6月以降に建てられた家のうち、等級を取っていないものだけを取り出した数字が公表されています。

熊本地震における性能評価取得住宅(木造)の被害状況(国土交通省・住宅性能評価・表示協会)
無被害 軽微〜中破 大破 倒壊
等級を取っていない家
(2000年6月以降・301棟)
181棟(60.1%) 101棟(33.6%) 12棟(4%) 7棟(2.3%)
耐震等級3を取った家
(16棟)
14棟(87.5%) 2棟(12.5%) 0棟 0棟

「等級を取っていない家」というのは、この表の注記では「住宅性能表示未取得物件および耐震等級1のもの」と定義されています。

その301棟のうち、6割が無被害で、倒壊は7棟(2.3%)でした。

国の委員会の総括にも、こう書かれています。

「接合部の仕様等が明確化された2000年以降の倒壊率が低く、接合部の仕様等が現行規定どおりのものは、今回の地震に対する倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められる」。

そして等級3については「大きな損傷が見られず、大部分が無被害であった」。

数字だけを見れば、等級3のほうが被害は小さく出ています。

一方で、等級を取っていない2000年以降の家も、震度7を2回受けて6割が無被害でした。

「等級を取っていない=弱い」とは言えない、というのがこのデータの読み方です。

効いているのは「等級」ではなく「いつ建てられたか」

上の表を見ると、差をつくっているのは等級の有無より、建てられた時期だと分かります。

建築基準法には、木造住宅にとって大きな分かれ目が3つあります。

木造住宅の耐震にかかわる建築基準法の分かれ目
日付 何が変わったか
1981年6月1日 新耐震基準。
必要な壁の量が強化された
2000年6月1日 木造の仕様規定の明確化。
柱の上下をつなぐ接合部の金物の仕様と、四分割法による耐力壁の配置のルールが決まった
2025年4月1日 改正建築基準法の全面施行。
木造2階建ても構造の審査を受けることになり、壁の量の計算方法と基礎の基準が変わった

2000年の改正が効いた理由は、報告書の中にはっきり書かれています。

益城町で倒壊・崩壊し、接合部の状況が確認できた1981〜2000年の木造住宅は、すべて2000年に決まった接合部の仕様を満たしていませんでした

壁の量が足りていても、柱と土台をつなぐ金物が弱ければ、引き抜かれてしまう。
そこが2000年に埋められたということです。

2025年4月に、何が変わったのか

これが「いま建築基準法が厳しい」の中身です。

きっかけは、実は地震ではなく省エネでした。

国土交通省の資料には、こう書かれています。

「断熱性能の向上や階高の引き上げ、トリプルガラスサッシ、太陽光発電設備等が設置される場合には、従来に比べて重量が大きく、地震動等に対する影響に配慮が必要」。

省エネ性能を上げるほど家は重くなります。
重い家は、地震のときに大きな力を受けます。

そこで、基準のほうを実態に合わせた、という流れです。

2025年4月1日から変わったこと

1. 木造2階建ても、構造の審査を受けるようになりました
それまでは、建築士が設計した2階建て以下・延べ面積500㎡以下の木造住宅は、建築確認のときに構造の審査が省略されていました(いわゆる4号特例)。

いまは、審査が省略されるのは「平屋かつ延べ面積200㎡以下」だけです。

普通の木造2階建ての一戸建ては、構造の図書を出して、第三者のチェックを受けます。

2. 必要な壁の量の計算方法が変わりました
これまでの「軽い屋根」「重い屋根」という大ざっぱな区分をやめ、屋根・外壁・床の重さに加えて、天井の断熱材・外壁の断熱材・高断熱の窓・太陽光発電設備の重さを個別に足し上げて、その家に必要な壁の量を計算します。

使える壁の上限も、壁倍率5倍から7倍に上がりました。

3. 無筋コンクリートの基礎が使えなくなりました
それまでは、しっかりした地盤なら鉄筋の入っていないコンクリート基礎でもよいことになっていました。

いまは地盤の種別にかかわらず、鉄筋コンクリートの基礎です。

壁の量の基準だけ、1年の猶予がありました

審査省略の見直しは2025年4月1日から始まりましたが、壁の量と柱の太さの基準だけは経過措置があり、2025年4月1日から2026年3月31日までに工事に着手するものは、改正前の基準でよいことになっていました。

つまり2026年4月1日以降に着工する木造2階建てから、新しい壁の量の基準が完全に適用されます

いま計画中の家は、ここに入ります。

なお、どちらの基準で建てたかは、確認申請書と建築計画概要書に記載欄があります。
建築計画概要書は、福岡市役所4階で誰でも無料で見られる書類です。
警固断層の記事で書いた、あの書類と同じものです。

「福岡は0.8だから弱い」ではありません

警固断層の記事を読んでくださった方から、この質問をいただきました。

建築基準法の構造計算では「地震地域係数」という数字を使い、福岡は0.8、関東や東南海などは1.0です。
だから福岡の家は8割の強さしかないのではないか、と。

これについて、熊本地震の委員会報告書に答えが書かれています。

「大きな被害を受けた木造の小規模な建築物については、地震地域係数を用いないいわゆる壁量計算などによって設計されている」。

そして「今回の分析の範囲では、地域の被害状況に地震地域係数の影響は確認されなかった」。

つまり、木造の戸建てが使う壁の量の計算に、地域係数は入っていません

2025年4月からの新しい計算式にも入っていません。
この点では、福岡も東京も同じ計算です。

地域係数が効いてくるのは、構造計算をする大きな建物のほうです。
だからこそ福岡市は、警固断層の近くの高さ20m超の建物に限って、係数を1.25倍する努力義務を条例で課しています。

正直に、書いておきたいこと

建築基準法は「倒れない」であって「無傷」ではありません

同じ報告書には、こう書かれています。

建築基準法令は、建築物の構造等に関する最低の基準を定めたものであり、今回の熊本地震のような大地震に際し構造部材や非構造部材等において損傷が生じないことや、被災後に継続して使用できることまでを要求しているものではない」。

実際、熊本地震では、倒れなかったけれど損傷のせいで使い続けられなくなった庁舎・体育館・病院・共同住宅がありました。

建築基準法が守ろうとしているのは、まず命です。
そのあとの暮らしまでは約束していません。

それから、2000年以降でも7棟が倒壊しています。

その内訳も報告書に書かれていて、3棟は接合部の仕様が不十分、1棟は敷地の崩壊と基礎の傾斜、残る3棟は原因が特定できませんでした。

基準が変わっても、そのとおりに施工されていなければ意味がない。

年代は目安であって、保証ではありません。

1981年から2000年の家には、国が用意したチェック法があります

いちばん判断に迷うのが、この年代です。
新耐震ではあるけれど、接合部のルールが決まる前。

この年代のためだけに、「新耐震木造住宅検証法」という方法が国の要請でつくられています。

対象は、1981年6月1日から2000年5月31日までに建てられた、在来軸組構法(基礎がコンクリート造)の平屋または2階建てです。

まず持ち主が自分でできる4つのチェック

1. 平面と立面が比較的整った形をしているか
2. 柱の上下の接合部に、接合金物が設けられているか(床下や天井裏の写真で確かめます)
3. 壁の配置のバランスが良いか
4. 建物が著しく劣化していないか

1〜3をすべて満たし、4が5点満点で4点以上なら「一応倒壊しない」と判定されます。

ひとつでも欠けるか、4が3点以下なら「専門家による検証が必要」。

その次の段階では、専門家が現地調査をせずに、図面と持ち主の調査結果だけで評点を出す方法が用意されています。
費用を抑えるための仕組みです。

もうひとつ、この年代の家で手がかりになることがあります。

当時の住宅金融公庫(いまの住宅金融支援機構)の融資を受けて建てられた木造住宅について、同じ資料はこう書いています。

「建築基準法に基づく確認検査に加えて第三者による設計審査や現場検査が実施されていること、工事仕様書により接合部が一定強度以上の仕様となっている可能性が高いこと(略)などを考慮すれば、一般的には一定の耐震性能が確保されているものと思われる」。

ただし同じ資料は、劣化の状況の調査をはじめ、耐震性能の検証を行うことが推奨される、とも書いています。

この年代の家は、いちばん新しいものでも築25年を超えています。

等級を取る意味は、地震のときだけではありません

ここまで「等級がなくても大丈夫」という話をしてきましたが、等級を取ることには別の実利もあります。

住宅性能表示制度を使うと受けられるもの
地震保険料の割引 耐震性能の等級に応じて10〜50%
フラット35S 金利の引き下げが使える
贈与税 非課税枠が拡大される

(住宅ローン減税の証明書類として使えるのは、断熱等性能等級などの省エネ関係の評価書です。
耐震等級ではありません。)

地震保険料の割引は毎年かかってくる費用に効きます。

新築を建てる場合、等級を取るかどうかを検討されるなら、こうした制度も材料のひとつです。

それぞれの適用条件は年度で変わるので、そのときの要件をご確認ください。

7月末の地震で、福岡でも被害が出ています

最後に、いま多くの方が気にされている7月末の地震について、数字だけ置いておきます。

令和8年熊本地震は、2026年7月28日16時27分に熊本県熊本地方で発生しました。
マグニチュード7.1、深さ約16km。
最大震度7を宇城市と氷川町で観測し、有明海・八代海に津波注意報が出ました(同日18時10分に解除)。

その後も震度5弱の地震が5回起きています。

令和8年熊本地震の被害(消防庁 第60報・2026年8月23日10時00分時点)
死者 負傷者 全壊 半壊 一部破損
熊本県 38人 360人 1,629棟 2,258棟 20,320棟
福岡県 2人 8棟
大分県 1人
鹿児島県 1人

福岡県でも負傷者が2人、一部破損が8棟。

震源から100km以上離れていても、被害はゼロではありませんでした。

なお、この数字は速報値で、今後変わります。

まとめ:気になったら、こう見ます

耐震が気になる物件があったら

まず見るのは建築確認を受けた日です。
1981年5月31日以前か、1981年6月〜2000年5月か、2000年6月以降かで、意味がまったく違います。

ここは登記簿の新築年月では分かりません。
確認済証・検査済証・建築計画概要書・設計図書のどれかが要ります。
ここは私たちに聞いてください。

・2000年6月以降なら、益城町の調査では等級がなくても6割が無被害でした。
ただし倒壊した7棟のうち3棟は接合部の施工が原因です。
年代は目安であって、その家の保証ではありません。

・1981年〜2000年なら、「新耐震木造住宅検証法」の4項目を見ます。
特に接合金物です。

・1981年5月以前なら旧耐震です。
福岡市の補助(耐震改修は経費の80%・上限150万円ほか)が使えるかを一緒に確認します。

・新築を建てるなら、2026年4月以降の着工は新しい壁量基準です。

「耐震等級は取っていますか」は、良い質問です。

ただ、その答えが「いいえ」でも、そこで話は終わりません。

本当に効いてくるのはいつ建てられて、どう造られたかのほうです。

気になる物件があれば、私たちに聞いてください。

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出典

警固断層のことが気になったら。福岡市が条例で線を引いた4区の全町名と、建物の耐震を確かめる手順

福岡で家を探していると、どこかで「警固断層」という言葉に当たります。

調べると不安になる情報も出てきますが、福岡市は2008年から、この断層のために条例で線を引いています

線の中にある町の名前は公表されていて、そこに建つ高い建物が地震の力をどれだけ上乗せして設計したかは、誰でも無料で見られる書類に書かれています

怖がるのでも、無視するのでもなく、確かめる。

その手順を、対象になる4つの区の町名ごと、まとめました。

まず、断層はどこを通っているか

南公園の展望台から見た福岡の市街地
南公園の展望台から見た福岡の市街地。断層帯は、この平野の中心を斜めに走っています(2023年5月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

国(文部科学省の地震調査研究推進本部)の評価では、警固断層帯は玄界灘から博多湾を経て福岡平野へ、北西から南東へ斜めに延びています。

東区の志賀島の北西沖から、博多湾、中央区、南区、春日市、大野城市、太宰府市を通って、筑紫野市まで。
全長は55km程度
です。

この55kmは、過去の活動の時期が違うことから2つに分けて評価されています。
海側の北西部と、陸側の南東部です。

福岡市の都心を縦断しているのは、このうち南東部のほうです。

警固断層帯の長期評価(地震調査研究推進本部)
北西部 南東部
どこ 玄界灘〜志賀島付近 博多湾〜中央区〜南区〜春日〜大野城〜太宰府〜筑紫野
長さ 約25km 約27km
地震の規模 マグニチュード7.0程度 マグニチュード7.2程度
最新の活動 2005年(福岡県西方沖の地震) 約4,300〜3,400年前
平均活動間隔 不明 約3,100〜5,500年
30年以内の発生確率 算定できない(活動履歴が不明なため) 0.3〜6%

南東部は、平均活動間隔が3,100〜5,500年で、前回の活動が約4,300〜3,400年前。

つまり、次までの期間の中では後半に入っている、という読み方になります。

30年以内に0.3〜6%という数字は、ゼロではないけれど毎年起きるものでもない、という幅で受け取ってください。

なお、この断層帯は春日市大野城市太宰府市筑紫野市まで達しています。

福岡市内だけの話ではありません。

2005年の地震は、この断層帯の北西部の活動でした

2005年3月20日の福岡県西方沖地震。

震源は福岡市の北西約30km、玄界灘の海底で、深さ約9kmでした。

この地震について地震調査研究推進本部は、「警固断層帯北西部の最新の活動は、2005年の福岡県西方沖の地震(マグニチュード7.0)です」と評価しています。

海の中とはいえ、同じ断層帯で20年前に起きた地震だった、ということです。

このとき市内で観測された震度は、東区と中央区が6弱、早良区と西区が5強、博多区・南区・城南区が5弱。

市全体で死者1名・負傷者1,038名・全壊141棟・大規模半壊8棟。

被害は「西区玄界島、東区志賀島地区、中央区の集合住宅に集中」しました。

震源にいちばん近かった西区の玄界島は震度6弱から7と推定され、700人・232世帯が地震当日のうちに全島避難しています。

この地震のあと、南東部について注意が呼びかけられています

地震調査研究推進本部は、警固断層帯についてこう書いています。

「断層帯北西部の2005年の活動により、断層帯南東部で地震が発生する可能性は、より高くなっているという指摘もあり、そのことに留意する必要がある」

福岡市が2008年に条例をつくった背景にも、この指摘が挙げられています。
市の資料には「警固断層帯南東部は福岡市の都市機能が集積している都心部を縦断している」と書かれています。

市が線を引いた区域と、その中で求めていること

中央区の警固・今泉あたりの通り
中央区の警固・今泉のあたり。この一帯が、市が条例で線を引いた区域に入っています(2022年10月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

福岡市は2008年10月1日から、建築基準法施行条例に第6条の2を加えました。

対象は、決められた区域の中に建つ高さ20メートルを超える建物です。

その建物の構造計算をするとき、地震の力の計算に使う「地域係数」を、1.25倍した数値にするよう努めなければならない、というものです。

福岡の地域係数は0.8ですが、1.25倍すると1.0になります。

市の解説には、1.0は「大地震が起こる可能性が高い地域(関東、東南海地域等)」の数値だと書かれています。

区域の線は、3つの理由で引かれました。

ひとつ、揺れやすさマップで計測震度6.4(震度6強でいちばん強いもの)が区域の75%以上を占めること。

ふたつ、警固断層帯南東部の真上であること。

みっつ、容積率600%以上で土地が高度に使われていること。

対象になっている町(4つの区)

条例の別表に載っている町名を、そのまま書き出します。

福岡市建築基準法施行条例 第6条の2 別表第1の区域
町名
中央区 西中洲、春吉1〜3丁目、渡辺通1〜5丁目、天神1〜5丁目、大名1〜2丁目、今泉1〜2丁目、警固1丁目、薬院1丁目・3丁目、清川1〜3丁目、高砂1〜2丁目、白金1〜2丁目、大宮1〜2丁目、那の川2丁目(1〜4番を除く)、平尾1〜2丁目、那の津1〜5丁目、荒津1〜2丁目、長浜1〜3丁目、港1丁目・3丁目、舞鶴1〜3丁目、赤坂1丁目
博多区 冷泉町、神屋町、築港本町、対馬小路、古門戸町、須崎町、中洲中島町、中洲1〜5丁目、博多駅中央街、博多駅前2〜3丁目、住吉1〜2丁目、寿町1〜2丁目、相生町1〜3丁目、南本町1〜2丁目
南区 那の川2丁目(1〜4番)、大橋1〜3丁目、井尻1丁目、横手1〜2丁目、横手南町、高宮1〜3丁目、高宮5丁目、向野1〜2丁目、野間1丁目
東区 西戸崎1〜6丁目

いちばん広いのが中央区で、区の中心部がほぼまるごと入っています。

次が博多区の博多駅前と中洲まわり、南区の大橋・高宮・井尻、東区の西戸崎です。

城南区早良区・西区は入っていません。

この条例は、守らなくても違反にはなりません

第6条の2は努力義務です。

また、新築と改築にだけ適用され、すでにある建物の増築や修繕には適用されません。

では、実際にどれくらいの建物が割増をしているのか。

2025年12月12日の福岡市議会で、天神ビッグバンで建て替えた・建て替える予定のビルのうち、条例の独自基準をクリアしたのは26棟だと示されました。

質問した議員は、これを「僅か46%なんですね。
義務化されていないお願いベースなので、低い到達にとどまっています」と述べています。

逆に言えば、天神という土地の値段が高い場所で、しかも大規模な建て替えでさえ、半分ほどにとどまっているということです。

ただし採用した建物は、しっかり上乗せしています。

同じ答弁では、天神ビジネスセンターと福岡大名ガーデンシティが条例の係数のさらに1.5倍以上、ONE FUKUOKA BLDG.も1.25倍以上とされました。

天神では、2026年末までに約90棟のビルが建て替わる見込みです。

義務にしている県もあります

静岡県は、県内全域で地震の力を1.2倍にする「地震地域係数(Zs)」を1984年から運用し、2017年10月1日からは条例で義務にしました

福岡市は、断層の近くの指定区域で高さ20mを超える建物に限った努力義務です。

同じ「割増」でも、対象の広さも強制力も違います。
この差を知っておくと、区域内の建物を見るときの目が変わります。

買う前に、その建物が割増したか確かめられます

市は、建築計画概要書という書類に、その建物が条例の対象かどうかと、1.25を乗じた場合はその旨を書かせています。

建築計画概要書の見かた

この書類は誰でも見られます

場所は福岡市役所4階、住宅都市みどり局 建築指導課の6番窓口。

そこにある検索の端末で、自分で調べて閲覧します。

閲覧は無料。
原本証明のついた写しがほしいときは1通300円です。

保存されているのは1999年(平成11年)以降の分。

検索には手がかりが要るので、住所(地名地番)、建築主の名前、建てた年月、階数などを控えていってください。

候補のマンションが決まっているなら、まずは売主か仲介に「建築計画概要書を見せてください」と言うのが早道です。

もうひとつ、中古を買うときにいちばん大事な分かれ目があります。

建築確認を受けた日が1981年(昭和56年)5月31日以前か、6月1日以後か
前なら旧耐震基準、後なら新耐震基準です。

登記簿の「新築年月」では判定できません

旧耐震か新耐震かは建築確認の日で決まります。
工事に何年かかったかによって、確認は1981年5月以前でも完成は1983年、ということが起こります。

登記簿の新築年月やチラシの築年数を見ても、そこは分かりません。

確認済証、検査済証、建築計画概要書、設計図書のどれかで、確認の日付を見てください。

あわせて、こういう限界も知っておいてください。

耐震について、確かめられること・確かめられないこと
手段 分かること 分からないこと
重要事項説明 造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、水害ハザードマップ上の所在地など 活断層からの距離は、宅建業法35条の法定の説明項目に列挙されていない
既存住宅状況調査(インスペクション) 構造耐力上主要な部分の劣化・ひび割れ・雨漏りなど、目視と計測で分かる範囲 耐震診断の評点、耐震等級、杭の支持力、隠れた接合部の状態
建築計画概要書 条例の対象か、1.25を乗じたか(1999年以降の分) 1999年より前に確認を受けた建物のこと

つまり、耐震のことはこちらから聞かないと出てきません

とはいえ、ご自分で売主や管理会社に問い合わせるのは、なかなか骨が折れます。

断層のことが気になったら、私たちに聞いてください

分譲マンションにも、補助があります

旧耐震のマンションを買って直したい、あるいはいま住んでいるマンションの管理組合で検討したい、という場合。

福岡市には共同住宅向けの補助があります。

福岡市の共同住宅(分譲マンション等)への耐震補助
何をするか 補助の額
耐震改修設計 補助率3分の2、1戸あたり5万円が上限
耐震改修工事 補助率3分の1(工事費の限度額51,700円/㎡を基礎に算定)、1戸あたり40万円が上限
段階的改修の1回目 限度額25,800円/㎡、1戸あたり20万円が上限

対象は、1981年5月31日以前に建築確認を得て着工した3階建て以上・延べ面積1,000㎡以上の共同住宅です。

金額は1戸あたりなので、戸数が多いマンションほどまとまった額になります。

申請は工事に着手するおおむね1か月前まで、完了報告は申請年度の1月末までです。

木造の戸建ては、条例の対象ではありません

条例は高さ20メートルを超える建物が対象なので、2階建ての戸建ては入りません。

そのかわり福岡市には、古い木造戸建てのための補助制度があります。

対象は1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を得て着工した木造戸建住宅です。

福岡市の木造戸建住宅への補助(旧耐震基準の住宅が対象)
何をするか 補助の額
耐震改修工事 経費の80%以内、上限150万円
耐震シェルター等の購入・設置 経費の40%以内、上限25万円
建替工事 1戸につき20万円(要件を満たせば除却の経費23%を上限30万円で加算。
最大50万円)
除却工事 経費の23%、上限30万円
危険なブロック塀の除却 費用の3分の2、上限30万円

耐震診断そのものへの補助もあり、2026年度から対象が「1981年5月31日以前に建てられたすべての建築物」に広がりました(それまでは共同住宅と病院が対象でした)。

診断費の補助は、住宅の簡易診断が3分の2で上限47,200円、詳細診断が3分の2で上限204,000円です。

注意点として、市の交付決定より前に工事を契約したり始めたりすると対象外になります。

先に建築物安全推進課(092-711-4580)へ相談してください。

直した後には税の軽減もあります。

1982年1月1日以前から建っている住宅で50万円を超える工事をし、原則3か月以内に申告すると、翌年度の固定資産税が床面積120㎡相当分まで2分の1になります。

被害の想定は、大きくなる方向で見直されました

福岡市が耐震改修促進計画で使ってきたのは、2012年に県の専門委員会が示した全壊2,177〜4,523棟、死者193〜458人という想定でした。

これに対して、福岡県が2025年度(令和7年度)に新しい地震防災アセスメントをまとめています。

そこでは、警固断層帯の北西部と南東部が連動して動く(マグニチュード7.7)ケースが想定に加わりました。

この場合の福岡市内の想定は、次のとおりです。

警固断層帯連動(M7.7)による福岡市内の被害想定:冬の18時・強風のケース(福岡県・令和7年度)
項目 想定
全壊・焼失棟数 約14,000棟
うち揺れによる全壊 約8,700棟
うち液状化による全壊 約1,400棟
半壊棟数 約27,000棟
死者 約900人
負傷者 約4,900人
1週間後の避難者 約208,000人

この想定は、地震が起きる時間帯と風の強さで数字が変わります。

上の表は、火を使う時間で人が街に出ている冬の18時に、強風が吹いていた場合です。
全壊・焼失と死者がいちばん多くなる条件を選びました。

寝ている人が多い冬の5時なら、建物の下敷きになる人が増えるので負傷者は約5,300人に増え、全壊・焼失は約12,000棟に減ります。

ひとつの数字だけを取り出さず、幅として見てください。

それでも、この記事の前のほうに挙げた従来の想定(全壊2,177〜4,523棟、死者193〜458人)と並べると、桁がひとつ上がっています。

ただし、数字が大きくなった理由のひとつは想定する地震そのものが変わったことです。
従来は南東部だけが動く想定で、新しい想定は北西部と南東部が連動して動く(M7.7)ケースです。

市はこれを踏まえて耐震改修促進計画を見直すと、2025年12月の市議会で答弁しました。

現行の計画は2021年4月改定のもので、新しい計画は2026年9月の時点でまだ公表されていません。

同じ計画には、福岡市の住宅の耐震化率が約87%(2013年の住宅・土地統計調査)という数字も載っています。

約775,000戸のうち耐震性があるとされたのが約672,000戸なので、そうでない住宅が約10万戸ある、という計算になります。

液状化は、埋立地に集まります

県の想定では、液状化による全壊の数が区ごとに出ています。

液状化による全壊棟数(警固断層帯連動・福岡県令和7年度)
全壊棟数
東区 約400棟
博多区 約300棟
西区 約300棟
中央区 約200棟
早良区 約30棟
城南区 約20棟
南区 約10棟

いちばん多い東区と、いちばん少ない南区とでは40倍の差があります。

そして、並び方が揺れの強さの順番とは違います。

揺れやすさマップでいちばん濃い色が広がるのは中央区ですが、液状化の全壊では4番目。
条例の区域にまったく入っていない西区のほうが多くなっています。

液状化は、揺れの強さだけでは決まりません。

2005年の地震でも、実際に液状化が起きています。

国土交通省の災害報告には、早良区の百道中央公園で約2,500㎡の液状化と園路の亀裂、中央区の地行浜中央公園で噴砂を伴う液状化が記録されています。

地盤工学会の現地調査では、ほかに愛宕浜、百道浜の住宅地、地行浜の道路・駐車場、那の津・須崎ふ頭、中央ふ頭などで噴砂・舗装の亀裂・沈下・岸壁の変状が報告されました。

海沿いの埋立地を候補にするなら、建物の杭と地盤改良の記録を売主に確かめてください。

地盤そのものは、国土地理院の土地条件図や、国の「KuniJiban」、防災科学技術研究所の「Geo-Station」でボーリング柱状図を見ることもできます。

ただし近所のボーリングは、その敷地の地盤を保証するものではありません。

誤解しないでいただきたいこと

区域の内と外で、安全・危険が分かれるわけではありません

条例の区域は、揺れやすさ・断層の真上・土地の使われ方という3つの理由で引かれた線です。

区域の外なら揺れない、という意味ではありません。

実際、揺れやすさマップでは区域の外にも震度6弱の想定が広く分布しています。

マップの凡例では、震度6弱は「耐震性の低い木造住宅では、倒壊するものがある」、6強は「耐震性の低い鉄筋コンクリート造建物では、倒壊するものがある」と説明されています。

いずれも「耐震性の低い」が前提です。

だからこそ、建てた年と、割増をしたかどうかを確かめる意味があります。

まとめ:この順で確かめてください

福岡で家を買う前に

1. 候補の住所が、上の表の町名に入っているかを見る。

2. マンションなら、建築計画概要書で1.25の割増をしているかを確かめる(市役所4階・誰でも・閲覧無料)。

3. 中古なら、建築確認の日が1981年5月31日より前か後かを確かめる。
登記簿の新築年月では判定できません。

4. 区域の外でも、揺れやすさマップで候補の住所の色を見る。

5. 海沿いの埋立地なら、杭と地盤改良の記録を売主に聞く。

6. 旧耐震なら、市の補助が使えるかを建築物安全推進課に相談する。

気になったら、私たちに聞いてください。

断層があること自体は、変えられません。

変えられるのは、どの建物を選ぶかと、建てた後に手を入れるかどうかです。

ご希望の条件をお聞かせいただければ、いまの福岡で何が選べるかをお出しします。

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