家を探すとき、「博多まで何分」は必ず調べます。
でもその電車が何両あるかを調べる方は、まずいません。
福岡でいちばん混む電車は、2両しかありません。
西鉄貝塚線です。
混雑率は169%で、東京圏の平均より上でした。
国土交通省が毎年、路線ごとの混雑率を測っています。
2026年7月に出た最新の数字を、福岡の路線だけ抜き出しました。
同じ「博多まで20分」でも、乗る路線で毎朝の中身はずいぶん違います。
福岡の路線を、混む順に並べました
和白駅に到着する貝塚行き。福岡でいちばん混む路線ですが、写真のとおり2両です(2017年5月撮影/そらみみ・CC BY-SA 4.0)
国土交通省の「都市鉄道の混雑率調査」の令和7年度版です。
2026年7月28日に公表されました。
混雑率は、朝いちばん混む1時間の平均で出しています。
いちばん上といちばん下で、169%と92%。
倍近く違います。
「169%」がどれくらいかを、言葉にすると
パーセントだけ見てもぴんときません。
国土交通省が目安を出しているので、そのまま引きます。
これに当てはめると、こうなります。
西鉄貝塚線の169%は、150%(肩が触れ合わない程度)と180%(肩が触れ合い、やや圧迫感がある)の間。
JRの92〜116%は、100%(座席につくか、吊革か柱につかまることができる)のあたり。
押し合いにはなりません。
地下鉄2線と天神大牟田線は、その中間です。
いちばん混む電車は、2両しかありません
同じ調査には、輸送力(何人乗れるか)と輸送人員(何人乗ったか)も載っています。
そこを見ると、貝塚線だけ事情が違うことが分かります。
貝塚線は2両が1時間に6本。
乗れるのは1,488人です。
地下鉄空港線は6両×21本で17,010人。
桁が違います。
つまり貝塚線の169%は、人が殺到しているというより、走っている電車が小さいということです。
乗った人数は2,520人で、地下鉄空港線の21,959人の9分の1でしかありません。
それでも1,488人ぶんの電車に2,520人が乗るので、1,000人ぶんあふれます。
2026年3月、貝塚線に手が入りました
ここが大事なところです。
国の169%は2025年10〜11月に測った数字で、そのあとダイヤが変わっています。
西日本鉄道は2026年3月14日に貝塚線のダイヤ改正を行いました。
2007年4月以来、19年ぶりの改正です。
西鉄は「朝ラッシュ時間帯の混雑率緩和を図るため」と説明しています。
増便にあわせて香椎花園前駅に2番のりばを新設し、3月16日から使い始めました。
ここには朝ラッシュ時間帯の、香椎花園前が始発・終点になる列車が発着します。
ただし、新宮側から乗る本数は1本減っています
増えたのは香椎花園前から先の区間です。
新宮町の西鉄新宮駅や、三苫・和白から乗る場合、この時間帯の本数は6本から5本になりました。
途中から乗る人ほど恩恵が大きく、終点側から乗る人はそうでもない、という改正です。
ご自身が使う駅の時刻表で確かめてください。
車両も入れ替わります。
いま走っている600形(8編成16両)は古くなったため、天神大牟田線で使っている7050形(9編成18両)を2027年度までに入れて、持っている編成を1つ増やします。
ただし7050形も2両編成です。
9編成で18両ですから、1編成あたり2両。
長くなるわけではありません。
天神大牟田線も同じ日に改正がありました。
平日7:30〜9:00に西鉄福岡(天神)駅へ着く上り普通列車を3本増やし、25本から28本に。
乗れる人数は約1万9千人から約2万1千人になりました。
2両になったのには、経緯があります
なぜ2両なのか。
福岡市が2026年1月に議会へ出した資料に、貝塚線と地下鉄箱崎線を並べた表があります。
貝塚線は単線です。
線路が1本なので、すれ違える場所でしか列車が交換できません。
本数を増やすのに限りがあります。
ホームも45〜87mしかありません。
2両ならどの駅にも入りますが、長い編成は駅によって入りません。
もっとも、昔は3両が走っていました。
600形の608・609・659をつないだ編成です。
その真ん中の1両(609)が外されたのは2008年でした。
西鉄の説明はこうです。
「千早駅などの沿線開発が進む前の2000年代前半にはラッシュ時の混雑率が低下したため」。
2両になったのは、線路や駅の造りのせいというより、乗る人が減ったからでした。
宮地岳線と呼ばれていた頃の年間の輸送人員は、1992年度の1,219万人から2006年度には714万人まで落ちています。
その翌年、2007年3月31日限りで西鉄新宮〜津屋崎の9.9kmが廃止されました。
そしていまは、また増えています。
路線を短くした2007年度の16,502人から、2024年度は23,434人。
同じ区間で7,000人増えました。
4割増です。
その間、朝の電車は2両×6本のまま動いていません。
混雑率も158%(2019年度)、164%(2024年度)、169%(令和7年度)と上がり続けました。
2026年3月の増便は、そこへの答えです。
地下鉄とつなぐ話は、55年前からあります
貝塚線に乗って天神へ行くには、貝塚で地下鉄に乗り換えます。
「乗り換えなしでつなげばいい」という話は、ずっと前からありました。
止まっている理由は、はっきりしています。
お金が合いません。
「いつか直通する」を前提に家を選ばないでください
B/Cは、かけたお金に対してどれだけの効果が返るかの比です。
0.6も0.42も、1を下回っています。
かけた費用ぶんの効果が出ない計算です。
福岡市はどちらの案についても「費用対効果等に課題があり、国庫補助採択基準を満たすことは困難」としています。
1971年から数えて55年、まだ実現していません。
2026年1月に「あらためて調査・検討する」としていますが、やる・やらないは決まっていません。
いま貝塚で乗り換えるなら、当分は乗り換えるものとして考えてください。
快速のほうが混む区間、普通のほうが混む区間
西鉄薬院駅のホーム(奥は西鉄平尾方面)。この平尾→薬院が、天神大牟田線でいちばん混む区間です(2018年6月撮影/そらみみ・CC BY-SA 4.0)
JRは快速と普通で数字が分かれていて、そこもおもしろいところです。
筑紫野市や太宰府市から乗る二日市→博多は、快速のほうが混みます。
快速は1時間に2本しかないからです。
逆に東区の香椎→博多は、普通のほうがわずかに混んでいます。
篠栗町や粕屋町から乗る篠栗線は、普通が92%でこの表のいちばん下。
1本待てば体感が変わることがある、ということです。
コロナ前と比べると、路線ごとに逆を向いています
同じ調査の2019年度(令和元年度)版と並べました。
地下鉄空港・箱崎線は16ポイント下がりました。
1時間の本数が20本から21本に増えています。
貝塚線は11ポイント上がりました。
本数も編成も、この6年で変わっていません。
だから2026年3月の増便につながった、と読めます。
七隈線は2019年度が127%、令和7年度が130%ですが、測っている区間そのものが違います(2019年度は桜坂→薬院大通、令和7年度は薬院→渡辺通)。
2023年3月に博多まで延びて、いちばん混む場所が動いたためです。
そのまま比べられません。
他の都市と比べると
同じ調査で、三大都市圏の平均も出ています。
令和7年度は東京圏143%(前の年より4ポイント増)、名古屋圏126%(増減なし)、大阪圏117%(1ポイント増)でした。
西鉄貝塚線は、東京圏の平均より混んでいます
169%は東京圏の平均143%を上回ります。
天神大牟田線の141%は、東京圏の平均とほぼ同じ。
地下鉄の2線(130%・129%)は名古屋圏を少し上回る水準。
JRの92〜116%は、大阪圏の平均117%以下です。
「福岡は通勤が楽」で片づけられません。
路線によっては、東京と変わらない朝もあります。
町を選ぶときに、どう使うか
この記事の数字は、7区の比較や町ごとの記事と重ねると意味が出てきます。
たとえば新宮町と粕屋町は、どちらも博多まで20分前後です。
でも新宮町から西鉄新宮駅を使うと貝塚線の169%、粕屋町からJRを使うと篠栗線の92%。
時間は同じでも、電車の中は別物です。
もっとも、新宮町にはJRの駅もあります(新宮町の記事で書いたとおり、博多はJR・天神は西鉄で駅が分かれます)。
同じ町でも、どの駅を使うかで変わります。
もうひとつ、2027年に新しい駅ができます。
JR鹿児島線の千早駅と箱崎駅の間で、駅名は「JR貝塚」に決まりました(2025年12月25日発表)。
箱崎駅から1.7km、千早駅から2.3kmの場所です。
駅名は公募で、10,551件の応募がありました。
ここができると、貝塚のあたりにJR・西鉄貝塚線・地下鉄箱崎線の3つが集まります。
直通運転は当分先でも、乗り換えの選択肢は増えることになります。
ただし停まる列車の種類も、ダイヤも、まだ発表されていません。
この数字の限界
1時間の平均です
混雑率は朝いちばん混む1時間の平均で、その中でも混む列車と空く列車があります。
元になっているのは令和7年10月〜11月の乗車人員データです。
上に書いたとおり、貝塚線と天神大牟田線はそのあとダイヤが変わりました。
また100%は「全員が座れる」という意味ではありません。
国の説明は「座席につくか、座席前の吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる」です。
数字はあくまで目安として見てください。
それでも、家賃や土地の値段と違って、通勤は毎日のことです。
数十年住むなら、1回あたりの差が積み上がります。
内見のときに、できれば平日の朝にその駅から乗ってみてください。
数字より確かです。
気になったら、私たちに聞いてください。
出典