福岡市の7つの区を、1本ずつ記事にしてきました。
書き終えて数字を並べ直すと、はっきりしたことがあります。
実際に売れた戸建ての値段は、いちばん安い東区が3,700万円、いちばん高い中央区が5,700万円。
差は2,000万円でした。
ところが土地の坪単価で比べると、中央区は東区の4倍近くします。
さらに同じ区の中で、いちばん高い場所といちばん安い場所が13倍以上ひらく区もあります。
つまりどの区かより、その区のどこかで決まるということです。
7区を1枚に並べました。
まず、区ごとの平均
南公園の西展望台から見た福岡市内、福岡ドームの方向(2017年5月撮影/そらみみ・CC BY-SA 4.0)
住宅地の平均です。
安いほうから並べました。
中央区が突出しています。
2位の博多区の2.2倍、市全体の平均の2.3倍。
いちばん安い東区とは3.9倍の差です。
7区とも前の年より上がっていて、上げ幅がいちばん大きいのは西区の+7.9%、いちばん小さいのが東区の+5.9%でした。
ところが、同じ区の中のほうが差は大きい
油山の中腹、城南区の片江展望台から。同じ市内でも、山に近づくほど土地は安くなります(2016年3月撮影/STA3816・CC BY-SA 4.0)
各区で、いちばん高い地点といちばん安い地点を並べます。
区の平均どうしの差が3.9倍なのに対して、早良区は区の中だけで13.7倍。
南区も13.2倍、西区も12.4倍あります。
この倍率は、山や田畑を含んでいます
数字が大きくなるのは、市街地から離れた場所を含めているからです。
早良区は面積が96km²と7区でいちばん広く、しかもそのうち76km²、8割が入部出張所の区域です。
脇山まで入れると約46.7倍になります。
西区も、市街化区域だけで見ると12.4倍が約4.4倍まで落ちます。
逆に中央区は15km²、城南区は16km²と狭く、区内の差も小さくなります。
「区の中で13倍」は、区の広がりを示す数字であって、住宅地を探す範囲の差ではありません。
区をまたぐと、順番が逆転します
南区の高宮5丁目は坪360.3万円で、中央区の平均(196.1万円)の1.8倍あります。
早良区の西新2丁目も坪253.2万円で、中央区の平均を超えています。
逆もあります。
中央区でいちばん安い笹丘3丁目は坪56.2万円で、城南区の平均(65.4万円)より安く、西区の平均(53.7万円)に近い水準です。
「中央区は高い」「東区は安い」というのは、区の平均の話です。
物件の話ではありません。
区で予算を切ると、入るはずの選択肢が落ちます。
50坪だと、いくらになるか
坪単価のままだと実感が湧きにくいので、土地50坪(約165㎡)に置き換えてみます。
まず、区の平均で買った場合です。
区の平均で見ると、東区の約2,520万円から中央区の約9,800万円まで。
ただし右の列を見てください。
中央区でいちばん安い笹丘3丁目の約2,810万円は、東区や西区の平均に近い水準です。
逆に博多区は、いちばん安い地点でも約1,790万円。
中央区に次いで下限が高く、区の中の差も4.5倍と7区でいちばん小さい。
安い場所が少ない区、ということです。
ところが、実際に売れた値段の差は2,000万円です
ここまでは土地の値段の話でした。
実際に取引された戸建ての値段を見ると、景色が変わります。
国土交通省は、実際の不動産取引の価格を公開しています。
2025年4月から2026年3月までの1年ぶんを区ごとに集計した中央値が、こちらです。
いちばん安い東区が3,700万円、いちばん高い中央区が5,700万円。
その差は2,000万円です。
土地の坪単価では東区50.5万円に対して中央区196.1万円と4倍近くひらいていたのに、家として買う値段になると、ここまで縮みます。
件数を見てください。
中央区は35件、博多区は27件しかありません。
一方で東区185件、南区163件、早良区146件、西区114件。
中央区や博多区は、そもそも戸建てがあまり売られていないのです。
売られているのは土地の狭い物件が中心で、だから総額はそこまで上がらない、と読めます。
マンションは逆に、中央区814件・博多区527件と多い。
おもしろいのは早良区で、戸建て3,800万円に対してマンションが3,700万円とほぼ同じです。
ほかの区は戸建てのほうが1,000万円以上高いので、早良区だけ形が違います。
時間で見るとどうなるか
土地の値段は、だいたい駅からの距離と博多・天神への近さで決まります。
各区の代表的な駅から、博多までの時間です。
中央区は入れていません。
天神と薬院が地元で、博多まで何分という測り方が合わないからです。
この表と値段の表を見比べると、城南区の位置づけが見えてきます。
博多まで14〜22分で、平均は坪65.4万円。
区の中の差も5.9倍といちばん小さい。
これは区全体が住宅地だからで、地価公示の17地点のうち16が低層・中層の住居専用地域です。
お金以外の2つ
土地の値段のほかに、区で大きく割れるところを2つ挙げます。
ひとつは、子どもの割合です。
市内149校区でいちばん高いのは東区の照葉北で31.7%(65歳以上は4.5%)。
2位も同じ東区の照葉はばたきで30.4%、3位が西区の西都で22.2%です。
いちばん低いのは西区の玄界で1.7%(玄界島)。
校区どうしで18倍以上ひらきます。
博多区の駅前4校区(博多・千代・堅粕・東住吉)は5.5〜5.6%、中央区の春吉は1世帯あたり1.20人で市内最少でした。
もうひとつは、地震のときの想定被害です。
福岡市は建築基準法施行条例で、決められた区域の高さ20mを超える建物に、地震の力を1.25倍で計算する努力義務を課しています。
対象は中央区・博多区・南区・東区の4区で、城南区・早良区・西区は入っていません。
ところが、福岡県が出している被害想定を区ごとに見ると、順番が合いません。
いちばん多いのは、条例区域に入っていない早良区です
約3,700棟。
条例区域がいちばん広い中央区は約1,200棟で、下から2番目です。
早良区が多いのは、揺れによる全壊が約2,000棟と7区で最多だから。
木造の住宅が多い区であることと合います。
条例は「高さ20mを超える建物」が対象なので、木造の戸建てには関係がありません。
条例区域=危ない区、ではないということが、この表からも分かります。
詳しくは警固断層の記事に書きました。
7区の記事は、それぞれこちらです
最後に
地価公示は「評価額」で、売買の値段ではありません
坪単価の数字は、国と市が毎年公表している標準地の評価額です。
実際の取引価格は、これより高いこともあれば安いこともあります。
同じ期間の取引を集計すると、博多区は公示より2割ほど高い一方、西区・南区・早良区は3〜4割安いという結果でした。
公示の標準地は駅に近い条件の良い場所に置かれることが多く、実際の取引には郊外の安い土地も入るためだと考えられます。
目安として場所どうしを比べるには使えますが、この値段で買えるという意味ではありません。
7区を並べて分かったのは、区で絞ると選択肢が落ちるということでした。
ご予算と通勤先が決まっていれば、区をまたいで候補を出したほうが、たいてい選べる幅が広がります。
気になったら、私たちに聞いてください。
出典