土砂災害の区域は、これから増えます。福岡県が調べている候補は13,662か所

重要事項説明で「土砂災害警戒区域には入っていません」と言われても、それはいまの話です。

福岡県は高精度の地形図を使って、区域になりうる場所を新たに13,662か所見つけました。
2024年度から現地を回っていて、指定は順番に進みます。

それと、区域に入っていなくても建築の制限がかかる決まりが別にあります。
がけの高さの2倍です。

水害(こちらの記事)とは、ずいぶん事情が違います。

いま、福岡市に1,774か所あります

野芥駅付近から見た油山
野芥駅のあたりから見た油山。早良区・城南区・南区の南側は、こうして山につながっています(2015年6月撮影/そらみみ (Soramimi)CC BY-SA 4.0

福岡県が指定している土砂災害警戒区域は18,496か所
そのうち特別警戒区域(レッドゾーン)が16,738か所です(2026年8月18日現在)。

福岡市だけで1,774か所あります。
区ごとに見ると、こうなります。

福岡市の土砂災害警戒区域(福岡県砂防課・2026年8月18日現在)
警戒区域 うち特別警戒区域
西区 580 515
早良区 449 431
東区 361 278
南区 132 99
中央区 95 78
博多区 84 75
城南区 73 51
福岡市計 1,774 1,527

周辺の市や町も出しておきます。

糟屋郡・筑紫地区の土砂災害警戒区域(同上)
市町 警戒区域 市町 警戒区域
筑紫野市 356 宇美町 159
那珂川市 256 須恵町 120
篠栗町 248 久山町 87
太宰府市 195 新宮町 72
大野城市 55 志免町 54
春日市 16 粕屋町 28

春日市の16か所と粕屋町の28か所が少なく、筑紫野市・那珂川市・篠栗町が多い。
平らな町と、山にくっついている町の差がそのまま出ています。

中央区にも95か所あります

桜坂駅付近の桜坂山の手通り
桜坂駅のあたり(中央区)。名前のとおり坂です。中央区にも土砂災害警戒区域は95か所あります(2015年6月撮影/そらみみCC BY-SA 4.0

意外なのは中央区です。
都心ですが、95か所すべてが急傾斜地の崩壊で、うち78か所がレッドゾーンです。

福岡市が公表している町丁名には、桜坂、浄水通、平尾、小笹、赤坂、六本松、警固、笹丘、輝国といったところが並びます。

坂の名前がついた町が多いことに気づきます。

南区も柏原・桧原・長丘・高宮・寺塚・大池、城南区も片江・南片江・東油山・七隈・樋井川、早良区も高取・西新5丁目・昭代。
山の裾に広がった住宅地は、たいてい入っています。

ただし町丁名に載っている=その町全部が区域、ではありません。
区域は斜面ごとに線が引かれているので、同じ丁目の中でも入る土地と入らない土地があります。
福岡市は校区ごとに地図を出しているので、必ず地図で確かめてください。

これから増えます。13,662か所を調べています

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

福岡県の発表(2025年6月27日)より

全国的に、土砂災害警戒区域に指定されていない箇所においても土砂災害が発生している状況を踏まえ、福岡県では高精度地形図を用いて、令和3年度から5年度にかけ、新たに区域指定を行うための調査箇所として13,662箇所を抽出し、令和6年度に現地調査に着手しました。

国が2020年度に方針を変えて、高精度の地形図で拾い直すことになりました。
それまでの地形図では見つけにくかった場所が出てきた、ということです。

県はこれを2023年度までに13,662か所として抽出し、2024年度から現地を回っています。

最初の指定は太宰府市の15か所で、2025年6月27日でした。
土石流が4か所(うちレッド1)、急傾斜地の崩壊が11か所(うちレッド7)です。

これから、順番に増えていきます。

福岡市は、調査中の場所も避難情報の対象にしています

福岡市はこう書いています。
「基礎調査箇所は、土砂災害の危険性がある区域であるため、福岡市では土砂災害警戒区域に準じ、避難情報の発令対象とします」。

まだ指定されていなくても、避難の呼びかけは同じ扱いということです。

福岡市は校区ごとに「基礎調査箇所のある町丁名」も公表しています。
いま区域外でも、この一覧に載っていれば話は別です

もうひとつ、福岡市が正直に書いていることがあります。

「今年度、区域が変更されたものは、土砂災害ハザードマップへの反映ができていません」。
地図と実際の指定にはズレがあります。
ハザードマップだけでなく、県の「土砂災害警戒区域等マップ」も見てください。

区域の外でも、がけの近くには建てられません

ここは見落とされがちなところです。

土砂災害警戒区域とはまったく別に、建築基準法の条例(通称「がけ条例」)があります。
福岡県の条例では、こう決まっています。

がけ条例(福岡県建築基準法施行条例第5条)
内容
「がけ」とは 地表面が水平面に対し30度を超える傾斜度をなす土地
対象になる高さ がけの上端と下端の垂直距離が3mを超えるもの
建てられない範囲 がけの上端から、また下端から、がけの高さの2倍に相当する距離以内
例外 擁壁を設ける、地盤が強固、建築物の構造で安全を確保する、土留施設や開口部のない壁を設けるなど

高さ5mのがけなら、上も下も10m以内には居室のある建物を原則建てられません。

これは土砂災害警戒区域に入っているかどうかとは関係なく効きます
区域外でも、条件を満たすがけがあればかかります。

福岡市の説明はもう少し実務的です。
「敷地の高低差が3メートルを超える場合は、福岡市建築基準法施行条例第5条(いわゆる『がけ条例』)の規定により、擁壁から決められた距離をあけて建物を建築するか、『がけ地』に対する安全性を確認する必要があります」。

あわせて、建築基準法第19条で既存の擁壁の構造的な安全性も確認することになっています。

古い擁壁がある土地は、そこを必ず見てください

擁壁が古い、図面がない、検査済証がない。
この土地に建て替えようとすると、擁壁を作り直すか、建物の位置を下げるかになります。

どちらも数百万円単位の話になりえます。
土地の値段だけを見て決めないでください。

擁壁の確認済証・検査済証・築造図が残っているか、水抜き穴があるか、隣地との境界はどうなっているか。
ここは購入前に確認できます。

レッドゾーンだと、何が変わるか

特別警戒区域(レッドゾーン)に入ると、規制の中身が変わります。
福岡県砂防課の説明から引きます。

特別警戒区域での規制(福岡県砂防課)
内容
売買 特定の開発行為は、知事の許可を受けた後でなければ宅地の広告も売買契約の締結もできない
開発 住宅宅地分譲や、社会福祉施設・学校・医療施設の建築のための開発行為は、対策工事の計画が技術的基準に従っていると知事が判断した場合に限って許可される
建築 居室を有する建築物は、作用すると想定される衝撃等に対して構造が安全かどうか建築確認がされる
移転 著しい危害のおそれがある建築物の所有者等に、知事が移転を勧告できる。
移転する人には住宅金融支援機構の融資やがけ地近接等危険住宅移転事業の補助がある

売る側から見ると、許可が下りるまで広告も契約もできないのがいちばん重い規制です。

買う側から見ると、建てるときに普通より頑丈な構造が要る、ということです。

買う前に、自分で確かめる手順

水害の記事と同じで、契約の場で初めて聞くのでは遅すぎます。

  • 県の「土砂災害警戒区域等マップ」で住所を見る:イエロー・レッド・基礎調査箇所を、それぞれ別に確認する
  • 福岡市の校区別ハザードマップも見る:ただし今年度の変更が反映されていない場合があるので、県のマップと両方
  • 敷地の高低差を測る:3mを超えるなら、がけ条例がかかる可能性があります
  • 擁壁の書類を見る:確認済証、検査済証、築造図。
    無い場合は建て替えの費用が変わります
  • 避難場所:土砂災害のときの避難場所は、水害のときと違うことがあります

区域に入っていたら、その物件はやめたほうがいいのか。

そうとは限りません。
福岡市だけで1,774か所あり、そこにも多くの人が住んでいます。

大事なのは、建物と擁壁がどうなっているかを見て、そのうえで決めることです。
区域の色だけでは決まりません。

気になったら、私たちに聞いてください。

出典