福岡市は、過去に浸水した地区の名前を公表しています。
先に対策を終えた55地区と、いま進めている33地区。
西新も百道も大橋も井尻も香椎も、その中にあります。
驚かせたいのではありません。
名前が出ている=市がもう手を入れた場所だからです。
この記事で地名を全部並べます。
それともうひとつ。
水害だけは、家を買うときに必ず説明される決まりになっています。
2020年8月からです。
水害は、買うときに必ず説明されます
警固断層の記事で、断層のことは聞かないと出てこない、と書きました。
水害は違います。
説明しなければならない決まりがあります。
2020年7月17日に国土交通省が発表し、同年8月28日から施行されました。
宅地建物取引業法の施行規則が変わり、重要事項説明の項目にこれが加わっています。
重要事項説明に加わった項目(国土交通省)
水防法(昭和24年法律193号)の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地
対象は洪水・雨水出水(内水)・高潮の3つ。
市町村が配っている印刷物か、ホームページに載っているものを印刷したもので、入手できる最新のものを使うことになっています。
避難所の位置も示すことが望ましいとされています。
国はあわせて、こうも書いています。
浸水想定区域に入っていないことをもって、浸水しないと誤解させないようにと。
色がついていない場所が安全、という意味ではありません。
「洪水」と「内水」は、別のものです
緑橋から見た御笠川(博多区堅粕・博多駅前)。1999年と2003年に、この川があふれて博多駅の周りが浸かりました(2023年9月撮影/Hirho・CC BY-SA 4.0)
ハザードマップは3種類あります。
名前が似ていて混ざりやすいので、市の説明をそのまま引きます。
福岡市 道路下水道局の説明
内水氾濫/下水道の雨水排水能力を上回る降雨量による浸水、あるいは河川水位の上昇により下水道から河川へ放流できず浸水
洪水/河川水位が上昇し、河川の破堤や溢水により浸水
大事なのは内水のほうです。
川があふれるのではなく、降った雨を下水道がさばききれずにあふれる。
だから川から離れていても起きます。
「近くに川がないから大丈夫」という考え方が、いちばん危ないところです。
もうひとつ、高潮があります。
台風や低気圧で海面が持ち上がるもので、こちらは沿岸部の話です。
福岡市の高潮ハザードマップは、県が2018年3月に公表した想定にもとづいています。
市全域の「雨の地図」は、今年3月にできたばかりです
内水のハザードマップは、福岡市ではずっと一部の地区しかありませんでした。
そろったのは、つい最近です。
博多駅周辺が2021年6月1日、天神周辺が2024年5月27日、そして下水道区域の全域が2026年3月25日です。
2021年の水防法の改正で、下水道の区域ぜんぶについて内水の浸水想定区域を指定する制度ができました。
それを受けて、福岡市が今年の3月に公表したものです。
つまり今から家を買う方は、川から離れた場所でも内水の話を説明されることになります。
去年までに買った方は、その地区の地図がまだ無かったかもしれません。
気になる方は、いまの地図で見直しておいてください。
下水道は1時間59.1mm、地図は153mmで描かれています
内水ハザードマップの色は、どれくらいの雨を想定して塗られているのか。
市はこう書いています。
福岡市の説明
想定最大規模の降雨(1時間当たり153ミリメートル)により、下水道などの排水能力を超える雨水が発生した場合の浸水の範囲と深さ
1000年に1度の規模にあたる雨です。
色は2つだけで、水色が浸水深0.5m未満、橙色が0.5m以上。
橙色は0.5m以上をまとめて塗っているので、そこが50cmなのか2mなのかは、この地図では分かりません。
いっぽう、福岡市の下水道が目標にしている水準は、こうなっています。
59.1mmで作っているところに、153mmで地図を描いている。
だから色がついている場所は広く出ます。
色がついている=すぐ危ない、ではありません。
逆に言えば、59.1mmを超える雨が降れば、地図の色が薄いところでも水は出ます。
地図は「この雨ならここまで」という一つの目安であって、線引きではないということです。
浸水した地区の名前は、全部公表されています
博多駅前1丁目に立つ、御笠川の激甚災害対策特別緊急事業の完成記念碑(2023年9月撮影/Hirho・CC BY-SA 4.0)
ここからは想定ではなく実績の話です。
福岡市は1999年6月29日の豪雨で大きな被害が出たあと、浸水した地区を洗い出して名前を挙げ、順番に対策してきました。
いまは2期目です。
ここが大事なところです。
1期目の55地区は、2018年度に対策が終わっています。
2期目の33地区も、2024年度末までに17地区が完了、2025年度に6地区、今年度(2026年度)に残り10地区が終わる予定です。
市の資料では、今年度末に33地区すべて完了となっています。
まず、1期目の55地区です。
ご自身が探している町の名前があるか、見てみてください。
西新、百道、大橋、井尻、長住、香椎、名島、竹下、板付。
よく名前を聞く町ばかりです。
選び方を、もう一度見てください。
1期目は「概ね10戸以上が浸水した地区」、2期目は「1回の雨で5棟以上が浸水した地区」です。
家がたくさん建っている場所ほど、この条件に当てはまります。
名前が出ていることを、そのまま「危ない土地」と読まないでください。
次に、いま進めている33地区です。
ここからは、想定ではなく実際に起きたことです。
福岡市は「雨水整備Doプラン2026」で、1989年度から2018年度までに浸水被害が出た242地区を洗い出しました。
そのうち1回の雨で5棟以上が浸水した地区を選び、33地区を重点地区としています。
博多区が12でいちばん多い結果でした。
博多区は御笠川と那珂川にはさまれ、低いところが多い区です。
西区の4地区はすでに全部終わっていて、博多区は今年度に6地区がまとまって終わる予定になっています。
なお1期目と2期目で、千代・吉塚・堅粕・原田・干隈・姪浜のように同じ地名が出てきます。
地区の区切り方が違うためで、二重に数えているわけではありません。
それと、この88の地区名がすべてではありません。
市が洗い出した対象は242地区あり、重点に選ばれなかった209地区にも浸水した実績があります。
そちらは「できるところからできるだけ」の対策とされています。
博多駅は、2回浸かっています
なぜ博多駅の周りだけ整備水準が高いのか。
実際に2回やられているからです。
2003年のほうを、よく見てください
福岡市内では1時間20mmしか降っていません。
傘をさせば歩ける雨です。
それでも太宰府市で104mm降ったために、博多駅の東側が浸かりました。
自分の家の上で降っていなくても、浸水します。
上流に何が降っているかで決まります。
川沿いを見るときは、その川の上流がどこかも見てください。
市はこのあと、2004年に「雨水整備レインボープラン博多」を立てました。
「大雨が降った後でも被害が無く、晴れ晴れとした気持ちで虹を眺めることができるように」という願いから付けた名前だそうです。
主要な施設は2012年5月に完成しています。
博多駅周辺では、大雨のときに水位を知らせる下水道として「比恵1号幹線」が指定されました。
これは全国で最初の指定です。
天神周辺では「天神幹線」が指定されています。
浸水は、火災保険の値段にも出ています
2024年から、火災保険の水災の料率が地域ごとに分かれました。
損害保険料率算出機構が「水災等地」という区分を作っていて、リスクがいちばん低い1等地から、いちばん高い5等地まで5段階あります。
同機構は「5等地の水災保険料は、1等地に比べて、約1.5倍となります」と書いています。
市区町村ごとに決まっていて、誰でも調べられます。
当社で福岡都市圏の19市町村を1つずつ引いたのが、次の表です。
この19市町村に、4等地と5等地はありません。
いちばん高いところで3等地です。
春日市や篠栗町が1等地、新宮町が博多区・中央区と同じ3等地、というあたりは意外かもしれません。
ハザードマップとは、別のものさしです
同機構はこう書いています。
「外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害等の水災リスクも含めて評価しているため、洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません」。
土砂災害も入っているので、川から遠い山手でも等地が上がることがあります。
また「各保険会社の取り扱いは異なる場合がございますので、火災保険をご契約する際は各保険会社へご確認ください」とも書かれています。
実際の保険料は、保険会社と契約の中身で変わります。
買う前に、自分で確かめる手順
説明義務があるとはいえ、契約の場で初めて見るのでは遅すぎます。
内見の前に、自分で見ておいてください。
- 洪水・内水・高潮の3つ:福岡市総合ハザードマップ(webmap.city.fukuoka.lg.jp/bousai/)で住所を入れる
- 実際に浸水した地区か:この記事の2つの表で町名を探す
- 避難場所:同じハザードマップに載っています。
歩いて何分かも見ておく
- 物件そのもの:道路より低くないか、駐車場が半地下でないか、エレベーターや電気設備が1階にないか
それと、重要事項説明のときに3種類とも見せてもらってください。
洪水だけ見て内水を見ていない、ということが起こりえます。
今年3月にできたばかりの地図なので、なおさらです。
買ったあとにできることもあります。
福岡市には雨水流出抑制施設の助成があり、雨水タンクは購入代金の半分(100〜500リットル未満で上限15,000円、500リットル以上で上限30,000円)、浸透ますは既存の建物で1基20,000円・1敷地10万円まで補助が出ます。
申請は毎年4月1日から12月15日まで、1家屋につき1回です。
自分の家の雨を減らすことは、まわりの浸水を減らすことでもあります。
ハザードマップに色がついていたら、その物件はやめたほうがいいのか。
そうとは限りません。
153mmという雨での想定ですし、同じ区域でも土地の高さや建物の造りで違います。
知ったうえで選ぶのと、知らずに買うのは別です。
気になったら、私たちに聞いてください。
出典