警固断層の上かどうかは、町名で分かります。福岡市が条例で線を引いた4区の全町名と、建物の耐震を確かめる手順

福岡で家を探していると、どこかで「警固断層」という言葉に当たります。

調べると不安になる情報も出てきますが、福岡市は2008年から、この断層のために条例で線を引いています

線の中にある町の名前は公表されていて、そこに建つ高い建物が地震の力をどれだけ上乗せして設計したかは、誰でも無料で見られる書類に書かれています

怖がるのでも、無視するのでもなく、確かめる。

その手順を、対象になる4つの区の町名ごと、まとめました。

まず、断層はどこを通っているか

南公園の展望台から見た福岡の市街地
南公園の展望台から見た福岡の市街地。断層帯は、この平野の中心を斜めに走っています(2023年5月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

国(文部科学省の地震調査研究推進本部)の評価では、警固断層帯は玄界灘から博多湾を経て福岡平野へ、北西から南東へ斜めに延びています。

東区の志賀島の北西沖から、博多湾、中央区、南区、春日市、大野城市、太宰府市を通って、筑紫野市まで。
全長は55km程度
です。

この55kmは、過去の活動の時期が違うことから2つに分けて評価されています。
海側の北西部と、陸側の南東部です。

福岡市の都心を縦断しているのは、このうち南東部のほうです。

警固断層帯の長期評価(地震調査研究推進本部)
北西部 南東部
どこ 玄界灘〜志賀島付近 博多湾〜中央区〜南区〜春日〜大野城〜太宰府〜筑紫野
長さ 約25km 約27km
地震の規模 マグニチュード7.0程度 マグニチュード7.2程度
最新の活動 2005年(福岡県西方沖の地震) 約4,300〜3,400年前
平均活動間隔 不明 約3,100〜5,500年
30年以内の発生確率 算定できない(活動履歴が不明なため) 0.3〜6%

南東部は、平均活動間隔が3,100〜5,500年で、前回の活動が約4,300〜3,400年前。

つまり、次までの期間の中では後半に入っている、という読み方になります。

30年以内に0.3〜6%という数字は、ゼロではないけれど毎年起きるものでもない、という幅で受け取ってください。

なお、この断層帯は春日市大野城市太宰府市筑紫野市まで達しています。

福岡市内だけの話ではありません。

2005年の地震は、この断層帯の北西部の活動でした

2005年3月20日の福岡県西方沖地震。

震源は福岡市の北西約30km、玄界灘の海底で、深さ約9kmでした。

この地震について地震調査研究推進本部は、「警固断層帯北西部の最新の活動は、2005年の福岡県西方沖の地震(マグニチュード7.0)です」と評価しています。

海の中とはいえ、同じ断層帯で20年前に起きた地震だった、ということです。

このとき市内で観測された震度は、東区と中央区が6弱、早良区と西区が5強、博多区・南区・城南区が5弱。

市全体で死者1名・負傷者1,038名・全壊141棟・大規模半壊8棟。

被害は「西区玄界島、東区志賀島地区、中央区の集合住宅に集中」しました。

震源にいちばん近かった西区の玄界島は震度6弱から7と推定され、700人・232世帯が地震当日のうちに全島避難しています。

この地震のあと、南東部について注意が呼びかけられています

地震調査研究推進本部は、警固断層帯についてこう書いています。

「断層帯北西部の2005年の活動により、断層帯南東部で地震が発生する可能性は、より高くなっているという指摘もあり、そのことに留意する必要がある」

福岡市が2008年に条例をつくった背景にも、この指摘が挙げられています。
市の資料には「警固断層帯南東部は福岡市の都市機能が集積している都心部を縦断している」と書かれています。

市が線を引いた区域と、その中で求めていること

中央区の警固・今泉あたりの通り
中央区の警固・今泉のあたり。この一帯が、市が条例で線を引いた区域に入っています(2022年10月撮影/HirhoCC BY-SA 4.0

福岡市は2008年10月1日から、建築基準法施行条例に第6条の2を加えました。

対象は、決められた区域の中に建つ高さ20メートルを超える建物です。

その建物の構造計算をするとき、地震の力の計算に使う「地域係数」を、1.25倍した数値にするよう努めなければならない、というものです。

福岡の地域係数は0.8ですが、1.25倍すると1.0になります。

市の解説には、1.0は「大地震が起こる可能性が高い地域(関東、東南海地域等)」の数値だと書かれています。

区域の線は、3つの理由で引かれました。

ひとつ、揺れやすさマップで計測震度6.4(震度6強でいちばん強いもの)が区域の75%以上を占めること。

ふたつ、警固断層帯南東部の真上であること。

みっつ、容積率600%以上で土地が高度に使われていること。

対象になっている町(4つの区)

条例の別表に載っている町名を、そのまま書き出します。

福岡市建築基準法施行条例 第6条の2 別表第1の区域
町名
中央区 西中洲、春吉1〜3丁目、渡辺通1〜5丁目、天神1〜5丁目、大名1〜2丁目、今泉1〜2丁目、警固1丁目、薬院1丁目・3丁目、清川1〜3丁目、高砂1〜2丁目、白金1〜2丁目、大宮1〜2丁目、那の川2丁目(1〜4番を除く)、平尾1〜2丁目、那の津1〜5丁目、荒津1〜2丁目、長浜1〜3丁目、港1丁目・3丁目、舞鶴1〜3丁目、赤坂1丁目
博多区 冷泉町、神屋町、築港本町、対馬小路、古門戸町、須崎町、中洲中島町、中洲1〜5丁目、博多駅中央街、博多駅前2〜3丁目、住吉1〜2丁目、寿町1〜2丁目、相生町1〜3丁目、南本町1〜2丁目
南区 那の川2丁目(1〜4番)、大橋1〜3丁目、井尻1丁目、横手1〜2丁目、横手南町、高宮1〜3丁目、高宮5丁目、向野1〜2丁目、野間1丁目
東区 西戸崎1〜6丁目

いちばん広いのが中央区で、区の中心部がほぼまるごと入っています。

次が博多区の博多駅前と中洲まわり、南区の大橋・高宮・井尻、東区の西戸崎です。

城南区早良区・西区は入っていません。

この条例は、守らなくても違反にはなりません

第6条の2は努力義務です。

また、新築と改築にだけ適用され、すでにある建物の増築や修繕には適用されません。

では、実際にどれくらいの建物が割増をしているのか。

2025年12月12日の福岡市議会で、天神ビッグバンで建て替えた・建て替える予定のビルのうち、条例の独自基準をクリアしたのは26棟だと示されました。

質問した議員は、これを「僅か46%なんですね。
義務化されていないお願いベースなので、低い到達にとどまっています」と述べています。

逆に言えば、天神という土地の値段が高い場所で、しかも大規模な建て替えでさえ、半分ほどにとどまっているということです。

ただし採用した建物は、しっかり上乗せしています。

同じ答弁では、天神ビジネスセンターと福岡大名ガーデンシティが条例の係数のさらに1.5倍以上、ONE FUKUOKA BLDG.も1.25倍以上とされました。

天神では、2026年末までに約90棟のビルが建て替わる見込みです。

義務にしている県もあります

静岡県は、県内全域で地震の力を1.2倍にする「地震地域係数(Zs)」を1984年から運用し、2017年10月1日からは条例で義務にしました

福岡市は、断層の近くの指定区域で高さ20mを超える建物に限った努力義務です。

同じ「割増」でも、対象の広さも強制力も違います。
この差を知っておくと、区域内の建物を見るときの目が変わります。

買う前に、その建物が割増したか確かめられます

市は、建築計画概要書という書類に、その建物が条例の対象かどうかと、1.25を乗じた場合はその旨を書かせています。

建築計画概要書の見かた

この書類は誰でも見られます

場所は福岡市役所4階、住宅都市みどり局 建築指導課の6番窓口。

そこにある検索の端末で、自分で調べて閲覧します。

閲覧は無料。
原本証明のついた写しがほしいときは1通300円です。

保存されているのは1999年(平成11年)以降の分。

検索には手がかりが要るので、住所(地名地番)、建築主の名前、建てた年月、階数などを控えていってください。

候補のマンションが決まっているなら、まずは売主か仲介に「建築計画概要書を見せてください」と言うのが早道です。
私たちのほうでもお調べします。

もうひとつ、中古を買うときにいちばん大事な分かれ目があります。

建築確認を受けた日が1981年(昭和56年)5月31日以前か、6月1日以後か
前なら旧耐震基準、後なら新耐震基準です。

登記簿の「新築年月」では判定できません

旧耐震か新耐震かは建築確認の日で決まります。
工事に何年かかったかによって、確認は1981年5月以前でも完成は1983年、ということが起こります。

登記簿の新築年月やチラシの築年数を見ても、そこは分かりません。

確認済証、検査済証、建築計画概要書、設計図書のどれかで、確認の日付を見てください。

あわせて、こういう限界も知っておいてください。

耐震について、確かめられること・確かめられないこと
手段 分かること 分からないこと
重要事項説明 造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、水害ハザードマップ上の所在地など 活断層からの距離は、宅建業法35条の法定の説明項目に列挙されていない
既存住宅状況調査(インスペクション) 構造耐力上主要な部分の劣化・ひび割れ・雨漏りなど、目視と計測で分かる範囲 耐震診断の評点、耐震等級、杭の支持力、隠れた接合部の状態
建築計画概要書 条例の対象か、1.25を乗じたか(1999年以降の分) 1999年より前に確認を受けた建物のこと

つまり、耐震のことはこちらから聞かないと出てきません

とはいえ、ご自分で売主や管理会社に問い合わせるのは、なかなか骨が折れます。

断層のことが気になったら、私たちに聞いてください

分譲マンションにも、補助があります

旧耐震のマンションを買って直したい、あるいはいま住んでいるマンションの管理組合で検討したい、という場合。

福岡市には共同住宅向けの補助があります。

福岡市の共同住宅(分譲マンション等)への耐震補助
何をするか 補助の額
耐震改修設計 補助率3分の2、1戸あたり5万円が上限
耐震改修工事 補助率3分の1(工事費の限度額51,700円/㎡を基礎に算定)、1戸あたり40万円が上限
段階的改修の1回目 限度額25,800円/㎡、1戸あたり20万円が上限

主な対象は、1981年5月31日以前に確認を受けて着工した3階建て以上・延べ面積1,000㎡以上の共同住宅です。

管理組合の決議など、手続きの条件もあります。

金額は1戸あたりなので、戸数が多いマンションほどまとまった額になります。

木造の戸建ては、条例の対象ではありません

条例は高さ20メートルを超える建物が対象なので、2階建ての戸建ては入りません。

そのかわり福岡市には、古い木造戸建てのための補助制度があります。

対象は1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を得て着工した木造戸建住宅です。

福岡市の木造戸建住宅への補助(旧耐震基準の住宅が対象)
何をするか 補助の額
耐震改修工事 経費の80%以内、上限150万円
耐震シェルター等の購入・設置 経費の40%以内、上限25万円
建替工事 1戸につき20万円(要件を満たせば除却の経費23%を上限30万円で加算。
最大50万円)
除却工事 経費の23%、上限30万円
危険なブロック塀の除却 費用の3分の2、上限30万円

耐震診断そのものへの補助もあり、2026年度から対象が「1981年5月31日以前に建てられたすべての建築物」に広がりました(それまでは共同住宅と病院が対象でした)。

診断費の補助は、住宅の簡易診断が3分の2で上限47,200円、詳細診断が3分の2で上限204,000円です。

注意点として、市の交付決定より前に工事を契約したり始めたりすると対象外になります。

先に建築物安全推進課(092-711-4580)へ相談してください。

直した後には税の軽減もあります。

1982年1月1日以前から建っている住宅で50万円を超える工事をし、原則3か月以内に申告すると、翌年度の固定資産税が床面積120㎡相当分まで2分の1になります。

被害の想定は、大きくなる方向で見直されました

福岡市が耐震改修促進計画で使ってきたのは、2012年に県の専門委員会が示した全壊2,177〜4,523棟、死者193〜458人という想定でした。

これに対して、福岡県が2025年度(令和7年度)に新しい地震防災アセスメントをまとめています。

そこでは、警固断層帯の北西部と南東部が連動して動く(マグニチュード7.7)ケースが想定に加わりました。

この場合の福岡市内の想定は、次のとおりです。

警固断層帯連動(M7.7)による福岡市内の被害想定:冬の18時・強風のケース(福岡県・令和7年度)
項目 想定
全壊・焼失棟数 約14,000棟
うち揺れによる全壊 約8,700棟
うち液状化による全壊 約1,400棟
半壊棟数 約27,000棟
死者 約900人
負傷者 約4,900人
1週間後の避難者 約208,000人

この想定は、地震が起きる時間帯と風の強さで数字が変わります。

上の表は、火を使う時間で人が街に出ている冬の18時に、強風が吹いていた場合です。
全壊・焼失と死者がいちばん多くなる条件を選びました。

寝ている人が多い冬の5時なら、建物の下敷きになる人が増えるので負傷者は約5,300人に増え、全壊・焼失は約12,000棟に減ります。

ひとつの数字だけを取り出さず、幅として見てください。

それでも、この記事の前のほうに挙げた従来の想定(全壊2,177〜4,523棟、死者193〜458人)と並べると、桁がひとつ上がっています。

ただし、数字が大きくなった理由のひとつは想定する地震そのものが変わったことです。
従来は南東部だけが動く想定で、新しい想定は北西部と南東部が連動して動く(M7.7)ケースです。

市はこれを踏まえて耐震改修促進計画を見直すと、2025年12月の市議会で答弁しました。

現行の計画は2021年4月改定のもので、新しい計画は2026年9月の時点でまだ公表されていません。

同じ計画には、福岡市の住宅の耐震化率が約87%(2013年の住宅・土地統計調査)という数字も載っています。

裏を返せば、1割強の住宅は耐震性が確かめられていない、ということです。

液状化は、埋立地に集まります

県の想定では、液状化による全壊の数が区ごとに出ています。

液状化による全壊棟数(警固断層帯連動・福岡県令和7年度)
全壊棟数
東区 約400棟
博多区 約300棟
西区 約300棟
中央区 約200棟
早良区 約30棟
城南区 約20棟
南区 約10棟

いちばん多い東区と、いちばん少ない南区とでは40倍の差があります。

そして、並び方が揺れの強さの順番とは違います。

揺れやすさマップでいちばん濃い色が広がるのは中央区ですが、液状化の全壊では4番目。
条例の区域にまったく入っていない西区のほうが多くなっています。

液状化は、揺れの強さだけでは決まりません。

2005年の地震でも、実際に液状化が起きています。

国土交通省の災害報告には、早良区の百道中央公園で約2,500㎡の液状化と園路の亀裂、中央区の地行浜中央公園で噴砂を伴う液状化が記録されています。

地盤工学会の現地調査では、ほかに愛宕浜、百道浜の住宅地、地行浜の道路・駐車場、那の津・須崎ふ頭、中央ふ頭などで噴砂・舗装の亀裂・沈下・岸壁の変状が報告されました。

海沿いの埋立地を候補にするなら、建物の杭と地盤改良の記録を売主に確かめてください。

地盤そのものは、国土地理院の土地条件図や、国の「KuniJiban」、防災科学技術研究所の「Geo-Station」でボーリング柱状図を見ることもできます。

ただし近所のボーリングは、その敷地の地盤を保証するものではありません。

誤解しないでいただきたいこと

区域の内と外で、安全・危険が分かれるわけではありません

条例の区域は、揺れやすさ・断層の真上・土地の使われ方という3つの理由で引かれた線です。

区域の外なら揺れない、という意味ではありません。

実際、揺れやすさマップでは区域の外にも震度6弱の想定が広く分布しています。

マップの凡例では、震度6弱は「耐震性の低い木造住宅では、倒壊するものがある」、6強は「耐震性の低い鉄筋コンクリート造建物では、倒壊するものがある」と説明されています。

いずれも「耐震性の低い」が前提です。

だからこそ、建てた年と、割増をしたかどうかを確かめる意味があります。

まとめ:この順で確かめてください

福岡で家を買う前に

1. 候補の住所が、上の表の町名に入っているかを見る。

2. マンションなら、建築計画概要書で1.25の割増をしているかを確かめる(市役所4階・誰でも・閲覧無料)。

3. 中古なら、建築確認の日が1981年5月31日より前か後かを確かめる。
登記簿の新築年月では判定できません。

4. 区域の外でも、揺れやすさマップで候補の住所の色を見る。

5. 海沿いの埋立地なら、杭と地盤改良の記録を売主に聞く。

6. 旧耐震なら、市の補助が使えるかを建築物安全推進課に相談する。

ここまでは、私たちがお手伝いできます。

断層があること自体は、変えられません。

変えられるのは、どの建物を選ぶかと、建てた後に手を入れるかどうかです。

ご希望の条件をお聞かせいただければ、いまの福岡で何が選べるかをお出しします。

出典