そろそろ家を、と考え始めて、福岡のどのあたりがいいか調べている方へ。
博多区は博多駅・福岡空港・博多港がそろう、福岡の玄関の区です。
人口26万8千人で、東区と並んで福岡市でいちばん伸びています。
当社のまとめ記事で並べた16の市区町村のうち、土地も家賃も、いちばん高い区です。
ただ「博多区」とひとことで言っても、博多駅前と、南の住宅地と、空港のそばでは、暮らしがまるで違います。
その3つの顔と、値段の中身、空港の音、川の話を、順にお伝えします。
まず、通勤から:どこからでも博多は近い
JR博多シティの2階デッキから見た博多駅前(2023年7月撮影/Hirho・CC BY-SA 4.0)
博多区の強みは、これに尽きます。
博多駅南・住吉・美野島は博多駅まで歩ける距離。
JR鹿児島本線の竹下駅は博多の隣の駅で、博多まで3〜4分、運賃200円、通勤定期は1か月6,690円です。
当社が並べている16市区町村の定期代で、いちばん安い金額です。
朝の本数は6時台4本・7時台8本・8時台9本。
当社で記事にしている早良区の西新駅(7時台20本)や南区の大橋駅(15本)より少なく、東区の千早駅(7本)と同じくらいです。
ただし博多まで1駅なので、本数の少なさが効く場面はそれほど多くありません。
地下鉄空港線は福岡空港駅・東比恵駅が博多区にあります。
福岡市地下鉄の標準所要時間では、博多駅から東比恵まで2分、福岡空港まで5分。
天神からでも空港まで11分です。
出張や帰省の多い方には、空港が生活圏にあることそのものが、この区の値打ちです。
校区の中身:駅前は「子どもが5%」の街です
福岡市の校区別の登録人口(2026年6月末)で、博多区の校区を並べます。
福岡市の7区に149ある校区を、子どもの割合が低い順に並べると、離島の3校区と中央区の春吉を除いて、いちばん低い4つが博多・千代・堅粕・東住吉、すべて博多区の駅前側です(5.5〜5.6%)。
1世帯あたりの人数も1.28〜1.30人で、春吉に次いで市で2〜5番目に少ない4校区が、この4つです。
つまり博多駅の周りは、単身の方の街です。
そのぶん東住吉校区は65歳以上が11.8%で、市で5番目に若い校区でもあります。
子どもが多いのは区の南側です。
弥生14.8%・那珂14.0%・三筑13.1%・板付12.7%と、竹下駅から南へ向かう住宅地に集まっています。
那珂小学校は1,027人・42学級で区でいちばん大きく、板付小741人、三筑小691人と続きます。
いっぽう空港の南側の東月隈・板付北は65歳以上が3割を超え、同じ区の中で、若い駅前と、高齢化した空港の南が並んでいます。
同じ区に、1,027人の小学校と、191人の小学校があります。
駅前の小学校は小さく、南の小学校は大きい。
「子どもの友だちが近所にいる暮らし」を求めるなら、博多区では竹下から南、と覚えておいてください。
ただし、那珂小学校区を考えている方には、先に知っておいていただきたいことがあります。
1,027人・42学級というこの規模について、福岡市の教育長は2023年9月の市議会で「現状でも過大規模校となっており、分離新設が必要な状況」と答弁しました。
同じ答弁で、那珂中学校についても「今後の住宅開発を考慮すると過大規模校となる可能性がある」とし、工場跡地に小中学校の用地を確保できないかアサヒビール側へ文書で申し入れた、と説明しています。
ただし、新しい学校をどこに建てるか、いつ開校するかは、公表されている資料では決まっていません。
つまり、いま那珂小の校区でも、分離のあとは通う学校が変わる可能性があります。
あわせて、福岡市の子育て世帯の住替え助成には「指定する校区」への転居は対象外という条件があるので、校区と助成の両方を契約の前に市の最新の資料で確かめてください。
私たちのほうでもお調べします。
土地の値段:16市区町村でいちばん高く、区の中で4.5倍
国が出している2026年の地価公示を、博多区の中で見比べるとこうなります。
博多駅南5丁目と、空港の南の金の隈で約4.5倍。
博多区の住宅地の平均は1㎡273,250円(坪90.3万円)で、前年より7.6%上がりました。
東区の平均(坪50.5万円)の約1.8倍です。
駅から南へ、那珂・竹下(坪76万円)、東月隈(44万円)、金の隈(36万円)と下がっていきますが、そのぶん次にお伝えする空港の音と川に近づきます。
2つの数字を混ぜないでください
上の表は国が出している地価公示(標準地の評価額)です。
当社のまとめ記事に載せている「博多区 坪98.9万円」はSUUMOに掲載中の売地の相場で、別の測り方の数字です。
測り方が違うので、この2つを並べて引き算しないでください。
賃貸は区の平均で2LDKが12万円台、3LDKが14万円台。
これも16市区町村でいちばん高い数字です(不動産ポータルの掲載家賃による参考値)。
「博多区で買う」は、福岡でいちばん高い土地を、通勤の近さと引き換えに買う、ということです。
空港の音:補助は「昔からある家」にしか出ません
福岡空港の国内線ターミナル。博多駅から地下鉄で2駅、街の中にある空港(2023年1月撮影/Nkmr844・CC BY-SA 4.0)
福岡空港は市街地の中にあります。
2025年3月20日に2本目の滑走路(2,500m)が使われ始め、年間の発着は約17万6千回から18万8千〜21万1千回へ増やせるようになりました。
便利さの裏で、空港の周りには国が定めた騒音対策区域があります。
ここで知っておいていただきたいのが、防音工事の補助の条件です。
空港周辺整備機構の案内では、対象は昭和49年〜57年の告示による区域内に、その当時から建っている住宅です。
つまり、区域の中にこれから家を建てても、告示のあとに建った家を買っても、防音工事の補助は原則ありません。
移転した跡地には大井中央公園、榎田中央公園、月隈パークゴルフ場などが整備されていて、空港の周りに公園が多いのはそのためです。
では、実際にどれくらいの音が鳴っているのか。
国(大阪航空局)が空港の周りで年じゅう測っていて、その結果が公表されています。
4か所ある測定局のうち、博多区にあるのは2つです。
第1種区域の線引きは62デシベル以上でした。
博多区の2局はどちらもその基準を上回っています。
席田中学校では2025年の1年間に騒音が15万8千回、1日あたり430回ほど記録されています。
ただし2025年の年間値には第2滑走路が使われ始める前の約3か月が入っているので、この数字を「滑走路が増えたせい」とは言い切れません。
空港の運用時間は、供用規程の上では24時間です。
定期便のダイヤは朝7時から夜9時55分までに組まれていますが、遅れなどで夜10時を過ぎることはあります。
候補地の住所を、区域図で確かめてください
騒音対策区域は福岡市だけでなく、大野城・春日・太宰府・粕屋・志免にもまたがります。
区域図は空港周辺整備機構が公開しています。
候補の住所が第1種区域に入っているか、入っているなら建物の窓がどうなっているかを、契約の前に確かめてください。
平日の昼と、夜9時ごろの両方で、実際にその場所に立って音を聞くのがいちばん確かです。
私たちのほうでも区域の確認をします。
川と地下:博多駅は、1999年に浸かっています
博多区の地図は、御笠川と那珂川にはさまれています。
1999年6月29日の豪雨で、気象庁の記録には「JR博多駅近くでは地下街に濁流が流れ込み1名が死亡」とあります。
福岡市の浸水記録でも、この日の浸水箇所として博多駅周辺と那珂が挙がっています。
福岡県の河川整備計画には、このときの御笠川で浸水した家屋が2,576戸、4年後の2003年7月にはさらに多い4,235戸、と書かれています。
「地盤が低いJR博多駅周辺では、家屋やビル等に加え、地下街・地下鉄等の地下施設でも浸水し、甚大な被害となりました」というのが、県の記述です。
この川は昭和38年に1,986戸、昭和48年に2,908戸と、以前から繰り返し氾濫してきました。
福岡市の下水道が「過去に浸水した地区」として重点にしている地区は、博多区が13地区で東区と並んで最多。
千代、吉塚・堅粕、博多駅周辺、住吉・美野島、竹下、那珂(2地区)、諸岡、半道橋、東那珂、浦田、板付、南八幡と、区のほぼ全域が名前で入っています。
福岡市の洪水ハザードマップ(博多区版)では、御笠川・那珂川・多々良川の沿いに浸水想定区域があり、川のそばには家屋倒壊等氾濫想定区域の色も付いています。
高潮ハザードマップでは、区の北側(千代・博多・堅粕・吉塚・東光の校区から空港周辺の低地まで)が1〜5m未満の想定区域です。
津波は博多校区版で、中央ふ頭に最短35分、那珂川と御笠川の河口に38分で、色が付くのは港の岸壁と河口沿いの細い帯だけです。
そのうえで、対策も進んでいます。
福岡市は1999年の水害のあと「雨水整備レインボープラン博多」に取り組み、主要な施設は2012年5月に完成しました。
山王には約3万立方メートルをためられる雨水調整池ができ、2006年6月から使われています。
「もう浸かりません」とは誰にも言えませんが、この街は一度大きく浸かって、そのあと20年かけて手を打ってきた場所です。
候補の物件が1階なのか、地下に駐車場があるのか、といった見方をしてください。
地震は、駅前のほうが強く揺れる想定です
福岡市の揺れやすさマップでは、警固断層帯は博多区の西の縁(中央区との境・那珂川沿い)を通っていて、博多駅周辺〜住吉〜美野島は震度6強、空港・月隈側は6弱〜5強の色です。
川に近く、断層に近い、という条件が、値段の高い駅前側に重なっています。
上に挙げた地名は地図を読み取ったおおよその範囲です。
候補の住所ごとに原図で確かめてください。
私たちのほうでお調べします。
なお、丘の団地に多い「大規模盛土造成地」のマップに、博多区は「空港前等」として載っています。
2005年の福岡県西方沖地震では、国の報告に「博多湾の沿岸域を中心として、主に埋立地において地盤の液状化が発生」とあります。
港に近い埋立地を候補にするなら、建物の杭や地盤改良の記録を売主に確かめてください。
人口26万8千人。福岡市の推計を8年先取りしています
博多区の人口は267,985人(2026年5月1日)。
1年で3,168人、1.2%増で、伸び率は東区と並んで7区で最高です。
福岡市の将来人口推計(2024年)では博多区は2034年に26万7千人で頭打ち、としていましたが、2026年の時点でそこに届いています。
1世帯あたり1.55人。
区のページには、市内の卸売業の5割超が集まる商業の中心で、南部が住宅地、とあります。
働く場所と住む場所が同じ区にある、というのが博多区の人口の増え方です。
保育・学童・医療費は、福岡市の制度です
2025年4月1日の福岡市の待機児童は4人(申込41,830人)で、区ごとの入りやすさはこれだけでは分かりません。
福岡市は2023年4月から、第2子以降の0〜2歳児の保育料を、収入に関係なく無償にしています。
学童(放課後児童クラブ)は平日の放課後から17時までが基本で月3,000円、18時までなら+1,000円、19時までなら+2,000円です。
子どもの医療費は高校生世代まで助成があり、通院は1つの医療機関につき月500円まで、入院と薬局は0円です。
夜間の急な病気は、早良区百道浜の急患診療センターが小児科を平日19時30分から翌朝まで受け付けています。
ごみは、夜に出します
福岡市のごみ出しは夜です。
燃えるごみは週2回、日没から夜12時までに出すと、夜のうちに回収されます。
燃えないごみと空きびん・ペットボトルは月1回。
指定袋は45リットルで45円です。
次の一歩
博多区を候補に入れるなら、この順で
まず、通勤先と「駅前で単身」か「南で子育て」かを決める。
駅前と南では校区の中身が別の街です。
次に、候補の住所を、空港の騒音区域図と、洪水・高潮・揺れやすさの原図に当てる。
そのうえで、値段が合わなければ、竹下から南(坪70万円台)、東月隈・金の隈(30〜40万円台)へ、音と川を確かめながら広げる。
それでも合わなければ、同じ博多まで10分台の南区や、定期代は上がりますが新宮町という選び方もあります。
ここまでは、私たちがお手伝いできます。
博多区は、通勤の近さと空港のそばという便利さを、福岡でいちばん高い土地と、空港の音と、川と断層の近さと引き換えに手に入れる区です。
その引き換えを知ったうえで選んでいただきたいと思います。
ご希望の条件をお聞かせいただければ、いまの博多区で何が選べるかをお出しします。
出典